TikTokは、米政府の非難を否定している。しかし、スイスで運用されているオープンソースの電子メールサービス「ProtonMail」のセキュリティ専門家が先日公表したレポートは、TikTokの主張に疑問を投げかけている。「TikTokは、大量の個人情報を収集するだけでなく、中国共産党による国境を超えた監視や検閲活動に協力している」
TikTokが懸念するのは、米政府が数千万人の米国人ユーザーに対し、アプリの利用を禁止することだ。そうなれば、これまで急成長を遂げてきた同社の事業は停滞を余儀なくされる。米国では先日、連邦政府職員が政府から支給された端末にTikTokをインストールすることを禁止する法案が可決された。
今後、TikTokはファーウェイと同様に商務省のエンティティリスト(制裁対象リスト)に登録される可能性が指摘されている。
TikTokは、数億人がダウンロードしている中国製アプリであり、潜在的な脅威であることは確かだ。ただし、同社が本当にデータを抜き取って監視活動をしていたのであれば、必ず技術的な証拠が存在するはずだ。しかし、これまで確固たる証拠は見つかっていない。
TikTokは、米政府が政治的キャンペーンとして同社への批判を強めていると主張している。「当社に関して、多くの誤った情報が広まっている。当社の米国支社のCEOとCISO(最高情報セキュリティ責任者)は、米国の軍と法執行機関での経験が長く、支社の従業員たちは最高水準のセキュリティインフラ構築に励んでいる」と同社は述べている。また、同社によると、米国ユーザーのデータは、中国のサーバーには送信されないという。
しかし、ProtonMailのレポートは、政治色のない、客観的な視点で書かれたものだ。執筆者たちは、CERN(欧州原子核研究機構)でセキュリティ・エンジニアを務めた経歴を持つ。
レポートには、次のように書かれている。「TikTokは、熱心にユーザーの個人データを収集している。同社は中国のインフラを活用し、親会社は中国共産党に近い。中国政府が大規模な監視とデータ収集を行う上で、TikTokは理想的なツールとなっている」
ProtonMailは、TikTokのデータ収集ポリシーや過去の訴訟、サイバーセキュリティ関連の白書、過去のセキュリティ脆弱性、プライバシーポリシーなどを精査した結果、同社が中国政府とデータを共有しており、プライバシー侵害の深刻な脅威であると結論付けている。