ビジネス

2020.07.30 10:00

下請けからの脱却 町工場の後継ぎが「自社ブランド」の立ち上げに込めた思い


Makuakeとの出会い


コロナが襲来してから、様々な行動が変わった。応援購入という言葉を頻繁に聞くようになり、作り手の想いや背景を知った上での消費活動が頻繁に行われるようになった。また身近なところで言えば、出社をストップし、寝に帰る家から、仕事をする家に変わった。

狭小スペースが多い日本の住宅市場において、テレワーク環境を作ることが難しい人たちが多くいると知ったとき、開発せずにはいられなかった。Makuakeに挑戦しようと決断した瞬間だ。

この状況になって一番苦しむのは狭いワンルーム賃貸に住む人たちで、以前開発したタナプラスを賃貸住宅対応させる必要があった。

2020年4月22日に、石膏ボード用専用金物の壁美人を製造している若林製作所にアポイントを取り、専用金物の開発をリモートでスタート。開発と同時に、SOFのメンバー数人に声をかけ、オンラインでプロモーションのための準備を開始。製品を東京から新潟へ郵送で送り返し、強度試験を何度も行い、2020年6月10日にはプロトタイプが完成した。

構想から開発までのスピードはわずか1.5カ月、映像制作やプロモーション、ページ作成を入れても2.5カ月という短期間でMakuakeを開始することができた。

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モノは人なり


タナプラスは日本製ということにとことんこだわって開発した。モノが出来る背景や生産者の声をしっかりと伝えたいからだ。

日本は世界的に見ても森林率の高い森林国であるにもかかわらず、安い海外の木材に押され、国産材の利用が進んでいない現状がある。国産材を利用しなければ、温暖化の原因である二酸化炭素の排出を抑えることができなかったり、大雨などで災害が起こりやすくなったりするなど、環境悪化につながってしまう。

このような背景を背負い、環境を良くしようと頑張っている生産者がいるということを伝えたく、北海道から東京へコストをかけて材料を仕入れている。

また、タナプラスの壁固定金物は、賃貸暮らしを快適にしたいという想いから、壁の傷が目立たない、ホッチキスで家具を壁固定する方法を発明した、新潟県にある若林製作所と共同開発を行った。 

環境を良くしたい、暮らしを快適にしたいというように、モノというのは単なる物質ではなく、人の想いの集合体なのだ。

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価格を下げる企業努力も重要だが、デザイナーやエンジニアは、生産者の想いをくみ取り、高くても欲しいと思える価値を作り出すことが求められている。

いいモノを安く売る薄利多売によって、たくさんのモノが現代に溢れ、私達の利便性は向上した一方で、モノに対する価値が下がり、愛着というものが失われたのも事実だ。私はものづくりを通して、本当の豊かさを表現していきたい。


細田真之介◎1990年9月24日、東京都東久留米市生まれ。細田製作所/Sense Of Fun代表 兼 デザインエンジニア。家業である有限会社細田木工所にて約9年間職人として従事。自社製品タナプラスを開発し、1990年代生まれの異業種クリエイター集団Sense Of Funを立ち上げ、D2C事業を展開。現在、株式会社Open Aにも所属しプロダクト開発を行う。

編集=新國翔大

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