ビジネス

2020.07.30

下請けからの脱却 町工場の後継ぎが「自社ブランド」の立ち上げに込めた思い

取り付け穴の目立たない壁掛け折りたたみデスク「タナプラスS」


開発を支えるエコシステム


専門家というのは尊くも危うい職業だ。私は家具を作ることは出来るが、それ以外のことは出来ない。家具を売るという一つのことをとっても、営業する人、ホームページを作る人、広告を作る人、撮影をする人など、あらゆる専門家の力が必要になる。

逆に言えば、営業をする人は売るモノを求めているし、撮影をする人は被写体を求めているというように、個人で活動している人たちは、お互いがお互いを求め合っている。

そこで、1990年代生まれの友人や知人をあたり、足りないものを補い合うプラットフォーム、異業種の専門家集団Sense Of Fun(SOF)を立ち上げた。大きく分けて制作チームと広報チームの2つに分類され、デザインエンジニア、一級建築士、グリーンドレッサー、グラフィックデザイナー、映像クリエイター、フォトグラファー、プロモーションディレクターなど、異業種のクリエイターらが参画した。 

募集した唯一の条件は、感性が似ていること。この団体は、企業ではないから利益の追求を第一とせず、格好良さや達成感、社会貢献などの感性価値の追求を第一目的とする組織だ。プロジェクトごとに集まったり、解散したりするギルド的であり、緩くも強固なチームが完成した。

個人事業の専門家とは、一人で活動するよりも、繋がることで何倍もの能力を発揮するのである。

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B2BからD2Cへ


チームアップをし、開発したタナプラスという製品を引っさげて国内最大級の家具見本市、インテリアライフスタイル展に出展。想像をはるかに越える多くの企業から反響を頂いたものの、価格や供給条件などが合わず、一件も契約に至らなかった。

交渉を進めていくうちに再三コストダウンを要求されたが、国産材や日本の職人に製作してもらうとどうしても金額が高くなってしまい価格が見合わない。

また製品の仕様も、尖った特徴のある製品は、安定供給という名のもと、より安全に丸くなり、私達が"作りたい"モノと販売者が"売れる"モノにギャップがあることを知った。

残念ながら、身の回りにある面白く革新的な製品はほとんどが海外製であり、日本で尖った製品が少ない理由は、流通の仕組みにあると感じた。

前例のない製品を売るには間接販売は難しく、ユーザーが本当に"欲しい"モノを届けるには、自社で開発し、自社で販売する、独自の流通を開拓する必要性がある。この時に体験したことがD2Cブランドを志す大きなきっかけとなった。

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編集=新國翔大

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