同社は2020年7月4日からMakuakeで、「取り付け穴の目立たない壁掛け折りたたみデスク タナプラスS」の先行販売を開始し、3日で目標金額に到達した。
町工場の後継ぎが自社製品を開発し、D2Cブランド「Sense Of Fun」を立ち上げるに至った背景を、代表の細田真之介に語ってもらった。
下請けからの脱却
私の家業は約50年間、木工所を営んでおり、大手住宅メーカーの下請けとして建具や家具を製造している。私が大学を卒業してから9年間、職人として現場で働いてきたが忙しく、働けど売り上げがあがらない現状があった。
家具業界への大手参入など、様々な問題が考えられ、その解決の糸口としてたどり着いた答えは、自社製品を開発し下請けを脱却すること。新規事業を立ち上げることが急務であった。
新規事業を始めるといっても、人数が限られている中小零細企業では、既存事業と並行して推進させるため、舵をきるのは容易ではない。さらに成功するかもわからない、既存事業に支障がでるなど、先代から反対の圧力もかかった。
時代の流れに合わせて会社を変革しなければいけないと感じる私と、今までの成功体験を捨てきれず、リスクを避け挑戦することを拒む先代。アクセルを踏んでもブレーキがかかるような、前進も少なく、消耗していくもどかしい日々を送った。
どちらも会社を思うがあまりの衝突であり、仕方のないことだが、価値観や思考のレイヤーの違いによる事業承継の難しさを体験した。形にとらわれず、会社を改善することに労力をかけることをやめ、個人事業を立ち上げ、サイドビジネスとして事業を進めていくことに踏み切った。
自社製品の開発
専門分化が進んだ現代では、考えることと作ることが切り離されている。下請けを脱却するためには、作る以外に考えること、いわゆる企画をする必要がある。同時に、職人も設計図通りに言われたモノを作るだけでなく、自ら考えて手を動かすデザインエンジニアへアップデートする必要がある。
企画を考える上で、SWOT分析やPEST分析など、自社の強みや弱み、社会情勢などの流れを把握したうえで企画を進めた。
頭で考えていても企画は出てこなかったが、日常の不満や怒り、日頃のストレスがヒントとなり、「狭さのストレスを解消する家具」タナプラスのアイディアが生まれた。
たくさんのモノが溢れている現代ではあるが、技術者しか思い浮かばないアイディアや機構がまだまだたくさん眠っている。結果として、試行錯誤して開発された製品は特許を取得し、独自性のある自社製品が誕生した。今から5年前の出来事である。