1枚1万円。高級クチュールメゾンAKRISがマスクに込めた想い

AKRISのマスク(テラコッタ色)

ウィズコロナの昨今、移動や外出先などでのマスク装着は欠かせない。ファッション業界で言うところの「必須アイテム」となった。先日、ほどほどに混んだ都内地下鉄の中で数えてみたら、乗客の7割が不織布の使い捨てタイプ、2割がコットンなどの布、残り1割がポリウレタン素材の繰り返し使えるタイプを装着していた。

なかには小池百合子東京都知事のように、色や素材でその日の装いにリンクさせるマスクを選ぶ人もいて、マスクという10x20cmの小さなスペースが、自分のスタンスやテイストを主張するひとつのファッションアイテムになりつつあると感じた。

そこへスイス発の高級ファッションブランド、AKRIS(アクリス)がマスクを発売するというニュースが飛び込んできた。「AKRISがマスクを?」とは意外だ。このご時世にさまざまなファッションブランドがマスクを開発・販売しているが、その多くがスポーツブランドや若者向けのカジュアルファッションブランドであり、AKRISのような、端的に言えばパリコレクションで新作を発表するようなラグジュアリーブランドがマスクを発売する例はまだ非常にレアだからだ。



ここでAKRISをご存知ない方のために説明しておこう。AKRISはテキスタイル産業で栄えたスイス・サンガレンに、縫製工房として1922年に創業したアパレルブランドだ。

創業者の孫である現在のデザイナー、アルベルト・クリームラー氏の下、高級クチュールメゾンに成長。圧倒的に上質な素材を使い、これ見よがしではなく美しく身体を包むディスクリート(控えめな)・ラグジュアリーファッションとして、世界の第一線で活躍する女性たちから大いに支持されている。

その顧客リストにはモナコ公国のシャルレーヌ公妃やUNHCR特使を務めるアンジェリーナ・ジョリーなどが名を連ねるといえば、その世界観をご理解いただけるだろうか。たとえば秋冬コレクションのコートなら1着数十万円する。
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Text by Miyako Akiyama

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