オプトと協業に至った経緯
とはいえ、ただでさえ溢れるほどの商品があるマーケットの中で本当に求められるニーズを反映して差別化することができるのか、仮に商品が作れてもきちんとターゲットに情報を届けることができるのかという懸念が残ったままだった。
これまでは特にトレンドに敏感でファッションへの投資意欲の旺盛な顧客層へのアプローチをメインにしており、彼らを取り込むことでシャワー効果的にブランドが波及していくことを前提にファッション媒体を中心としたプロモーションを行ってきたため、実行にあたってはその点でも新しいアイディアを要求されていたのだった。
そこに転機が訪れたのは、オプト社のオープンイノベーションを目的とした組織「Studio Opt」との出会いだった。その頃、社内ではIT系ビジネスパーソン向けのセットアップスーツ開発プランがマーケティング主導のトライアル企画として承認、社外マーケターを含めたプロジェクトチームがスタートした際に挙がったアイディアが企業コラボとしての商品開発であった。
実際にリアルな想定ターゲットである相手と協業することが最も成功への近道であり、そのインサイトやライフスタイルを理解することが成否を分けると思ったが、問題はどこと組むべきなのかということ。数ある企業の中でもオプト社は独自性が強く、オンラインとオフラインを横断するかたちで様々なクライアントの課題解決をしているイメージがあり、会社としても色々な繋がりがあったことで取り組みを打診。
ちょうどオプト社内でデジタル系広告代理店という枠を超えてクライアントの事業に新しい価値を創造することを目指し、デザインイノベーションファームとして組織された「Studio Opt」との理念が合致。これを快諾いただいたことから一気にプロジェクトが回り始めることになり、発足したのが「IT-JACKET PROJECT」だった。
変化するワークスタイルとビジネスウェアへのリアルなニーズ
IT-JACKET PROJECTは、アバハウスが商品企画と販売、オプト社が商品開発に必要なマーケティングを担当する協業体制をとり、プロモーションについても両社の得意分野であるファッション媒体とビジネス・IT系媒体に手分けしてアプローチを行う座組みが整った。
その上で、まず取り組んだことはリアルなターゲットユーザーであるオプト社の社員へのヒアリングや座談会の実施だった。
そこでは、デジタル系広告代理店といえども、かつては基本的に営業職のスーツ着用はマストであったこと、現在ではカジュアル化が進んだがかえって何を着て良いか分からなくなっている社員が多いこと、いわゆるスーツではなくても客先に向かう際や急な来客などジャケット程度の着用が好ましい場面も多いことなどリアルなヒントが語られた。