ビジネス

2020.07.28

異色の企業コラボ 「新時代のビジネスウェア」大ヒットの理由

IT-JACKET PROJECT


また、ビジネスウェアに求めたいポイントとして従来のスーツとは異なる動き易さやPC作業をしても窮屈に感じない快適性という点は想定内であったが、実はその次に重要となったのは収納力ということだった。



外出時はもちろん、社内であってもフリーアドレス的な働き方でミーティング毎に移動をするため、身の回りの小物を持ち歩く必要があるなど、ヒアリングを進める上で収納力に関するニーズは思いの外多かった。最低でも個人用と社用でスマホ2台、名刺入れ、社員証、カードキー、筆記用具、場合によってはポケットWi-Fiまでということもあった。

解決策としてジャケットには内側にマルチポケットを配しながら、多少重量物を入れていても着用時に型崩れしないバランスを実現。加えて座った状態でパンツのポケットからものが出し入れしづらいという声を受けて、ポケットの内袋の角度を変えるなど細やかなこだわりを注ぎ込んだ。

そうして形となったIT-JACKET PROJECT第一弾アイテムであるセットアップスーツは、一見ウール調でタイドアップにも対応する素材感ながら自宅での洗濯も可能なストレッチ生地、ビジネスはもちろんカジュアルなインナーやスニーカーとのコーディネートにも合うデザイン、PC作業に適した腕の角度を取りやすいように設計されたパターンを採用。



前出の特徴と併せて書ききれない仕様を盛り込んだ極めて完成度の高いものになったが、次に課題となったのはプライス設定だった。

商品へのこだわりは生産工程が増えることを意味しておりダイレクトに価格に跳ね返ってくるが、今回のターゲット層が求めているのはあくまでもリアルなビジネスウェア。最終的には“ジャケットとパンツのセットで3万円アンダーでなければどんなに良い商品でも仕事着としてはリアルでは無い”という声を受けてその通りに価格を決定。プライス自体もひとつの性能としてクオリティを維持しながらコストカットを試み完成へと漕ぎつけた。

過去のアバハウスにおける商品開発であれば、例えば予算3万円でセットアップスーツを求めているという顧客ニーズがあったとしても、価格4万円だがデザインやクオリティ的に6万円相当の価値を感じられるものを作れば選んでいただけるという発想があったことも事実。結果的に本プロジェクトはブランドアイデンティティであるモノづくりに踏み込むことになり、まさにマーケティング主導のトライアル企画というかたちであればこそ、その殻を破るような挑戦としての第一歩となった。
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編集=新國翔大

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