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イノベーションの舞台裏

IT-JACKET PROJECT

いまアパレル業界は大きな変革期を迎えている。海外コレクションを頂点として売り手側であるメーカーやブランドが新しいトレンドを消費者に提案、毎シーズン大規模な買い替え需要を喚起するという従来の流れに対して反応が鈍くなりつつあることは確かだ。

かつてファッションは憧れの対象であり、クリエイティブディレクターやプロデューサー、デザイナーと呼ばれるトレンドセッターが生み出す華やかで新しいプロダクトに心躍らせる人も多かった。

現在ほどマーケットにおけるブランド数や供給量が飽和していなかった時代には、消費者ニーズを汲み取るのではなく、供給サイドがマーケットに対して提案をするというプロダクトアウト型のビジネスが成立していたが、モノ余りで供給過多な中ではそれも難しくなった。また、価値観の多様化やライフスタイルの変化により必ずしも生活におけるファッションに対するプライオリティは高くはなくなっている。

だからこそ、今洋服に求められているのはまさに買うべき理由。ブランドの世界観やトレンド性といった曖昧な雰囲気などではなく、それを購入することで得られるメリットや効用がきちんと感じられるアイテムが求められているのだ。

「ビジネス需要を取り込めていない」ことが課題に


アバハウスは創業40年を超えるメンズブランドであり、かつてのDCブランドブームによりその勢いを伸ばし、その後セレクトショップ隆盛の中でも時代に合わせてお客様に支持をされ続けてきた。一貫してクリーンで洗練されたデザインと細身のシルエットを好む顧客層を取り込み成長したが、近年はマーケット構造の変化への対応に苦慮する場面もあった。

消費者の買い物におけるアプローチが変化して実店舗での客数の減少、プライスバリューのある商品が溢れたことで相対的に価格が高く感じられるようになったこと、カジュアルウェアを購入する方でもスーツなど仕事着は割り切って量販店を利用しているといったアンケート結果もありビジネス需要を取り込めていないことが課題となっていた。

また、一般的にアパレル企業内ではデザインや商品企画、パターン、生産管理など高度に専門性を求められる部門がモノづくりを担当するため、マーケティング部門が商品に関与できる部分は限定的であり課題解決に向けた仮説を検証する機会を得られないままでいたところだった。

その仮説とは、抜本的な客数増加に向けてより広いターゲットへの訴求とビジネス需要の取り込みを目指すにあたり、狙うべきは複数のガジェットを仕事で使いこなすようなIT系ビジネスパーソンであるということ。

仮に趣味的な洋服好きという意味でのファッションコンシャスではなくても、日々新しい技術に触れていて働き方も先進的というイメージもあり、自社の出店環境ではコンタクトしきれていないが潜在的には大きな可能性があると感じていた。

既存の売場で従来通りのスーツやシャツの品揃えを拡充することではなく、IT系ビジネスパーソンを想定したアイテム開発を行うことで新たな活路を見出したいと考えた結果、まず思い付いたのがそのビジネススタイルにあった高機能セットアップスーツの開発だった。

編集=新國翔大

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