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「新政」の酒づくりを特徴づけているひとつが木桶での仕込み。33個の木桶は日本でも最多だ。Photo by Shingo Aiba

日本酒にはいくつか、一般には大変手に入りにくい酒蔵の酒がある。日本酒好きな人なら、酒場のメニューにこの名を見つけて「やった!」と心の中で快哉をあげるような酒だが、一般の酒販店や飲食店ではまずお目にかかることがない。その代表格のひとつが「新政酒造」(秋田県)の酒だ。

この稀少性の理由には、まず生産本数の少なさと、クオリティを担保できるようしっかりと品質管理できる環境を確保するため、選ばれた酒販店や飲食店にしか卸されないという限定された流通経路、そして卓越した味わいの良さが挙げられる。いずれにせよ、見つけたらラッキーな酒、それが「新政酒造」の酒だ。特徴としては、すべて純米、生酛造りであること、現存する最古の清酒酵母である「きょうかい6号」を世に誕生させた蔵であることなどがあるのだが、テクニカルなことについて語るには字数が足りない。また別の機会に譲るとして……。


新政酒造の自社田。Photo by 松田高明

その「新政」が今年7月の九州の豪雨災害を受け、復興をサポートするためのチャリティー酒「天蛙(あまがえる)」を発売することになった。秋田の酒蔵が九州の災害支援を行うとは意外にも思えるが、復興支援酒の販売は実はもうこれで9回目となるのだという。どんな想いが込められているのか。新政酒造8代目当主の佐藤祐輔さんが語ってくれた。

「最初に復興支援酒を造ったのは2015年、ネパール地震による災害を支援するためのものでした。でもそもそものきっかけとなったのは11年の東日本大震災です。当時、我々の蔵は数百本の瓶が割れただけでさほど大きな被害を被らなかったものの、宮城や福島の酒蔵の被害は甚大なものでした。日本酒の業界自体も大きなダメージを受け、このままではダメになってしまうという危機感も大きかった。そこでなんらか支援したいと思いましたが、当時私は代表に就任しておらず、まだ経営にも不安がありました。15年には少しの余裕も生まれていたので、初めて支援酒が造れたわけです」

以来、台湾地震(16年)、熊本地震(17年)、西日本豪雨・北海道肝振東部地震(18年)、台風15号・19号(19年)と、復興支援酒の売り上げの一部を激甚災害の被害に寄付することで支援し続け、その寄付金額の合計は1300万円を超えた。今年は「新型コロナウイルス感染拡大で困っている飲食店を応援し、売り上げの一部を医療従事者に贈りたい」と、5月に3000本限定で販売した「亜麻猫VIA(アマネコヴィア)」に続き、2度目の復興支援酒販売となる。


「亜麻猫VIA(アマネコヴィア)」通称アマヴィアは3000本限定で販売されたが、即完売した。オリジナルラベルのインスピレーションはもちろんあのアマビエから。

Text by Miyako Akiyama

VOL.19

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