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2020.07.25 08:30

データを無視した小売店再開 ピッツバーグのモールで見た失敗例

モール内にできる入店待ちの列(Al Bello/Getty Images)

モール内にできる入店待ちの列(Al Bello/Getty Images)

小売業界は多くの激しい闘いを通じ、適切なデータはいつも正しい道を示してくれることを教訓として学んできた。私が先日、地元のショッピングモールに行ったときほど、この教訓が明らかなときはなかった。

私がモールに向かったのは、一部には息子のショートパンツを買うためだったが、大部分は好奇心からだった。何が待ち受けているかは全く見当もつかなかった。モールは空だろうか? 店舗は閉まっているだろうか? 店には、ショートパンツの在庫があるだろうか?

モールには夢中になって買い物をする客があふれていたが、多くの店舗が残念なことに、最良の習慣と最悪の習慣をごちゃ混ぜにしていた。対応には一貫性がなく、消費者のニーズと期待に添えていないのが明らかだった。

いくつかの店は適切に対処していたが、非常に多くの小売業者やブランドが、顧客へのサービス提供の指針としてデータを使う方法をいまだに理解していなかったことが驚きだった。最大限の売り上げを得ることが、これまで以上に重要な時期であることを考えるとなおさらだ。

ここでは、米ペンシルベニア州ピッツバーグのロス・パーク・モール(Ross Park Mall)で私が目にした、店舗再開戦略の成功・失敗例を紹介する。

ルルレモンとスワロフスキー


アップルストアに90分待ちの列ができていたことには驚かなかったが、スポーツウエアブランドのルルレモンでも同じ待ち時間だったことには驚かされた。同社の服は現在流行しているが、買い物客がネットで購入するより実際にモール店に足を運ぶことを望んでいることからは、繰り延べ需要のほかに、「新たな日常」での生活再開を誰もが望んでいることが示されている。

店舗には顧客が欲しがる商品が十分そろっており、構造もきちんと考えられていて、スタッフは準備ができていたため、売り上げはどんどん上がっていた。アメリカンイーグルも同様に営業していて多くの客が詰め掛けていた。

その一方、すぐ右にあったスーツケース・旅行バッグブランドのトゥミ(TUMI)は閉まっていた。店がまだ存続している唯一の印は、なんと3月31日に再開すると書かれたはり紙だけだった。また、小さな独立系宝石店のホール・ジュエラーズ(Hall Jewelers)とピアシング・パゴダ(Piercing Pagoda)も営業していて非常に多くの客がいたが、スワロフスキー・クリスタルは閉まっていた。

こうしたブランドは、ピッツバーグの消費者の間で、実際に店を訪れ商品を買う意欲がどれほどあるかを明らかに読み間違っていた。(消費者の意見を聞くことも考えなかったのだろう)。こうして、粗末で現実離れした開店戦略を採用していたのだ。
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翻訳・編集=出田静

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