バロンドールを選ぶフランスのサッカー専門誌「フランス・フットボール」は授与中止について、通常通り開催された期間が2カ月(1月と2月)だけなのは、選手のパフォーマンスを判断するには短すぎると説明している。
また、無観客試合の開催や、欧州チャンピオンズリーグの準々決勝以降が集中開催されることになったこと、また、過密日程が懸念されるなか、選手の負担軽減を目的に交代枠が3人から5人に拡大されたことなど、「異例の方式」がとられている点も考慮したという。
昨年のバロンドールは、アルゼンチン代表のリオネル・メッシ(バルセロナ)が6度目の受賞を果たし、女子部門は米国代表のミーガン・ラピノー(レイン)が輝いた。若手部門(コパ・トロフィー)はオランダ代表のマタイス・デ・リフト(ユヴェントス)、新設のゴールキーパー部門(ヤシン・トロフィー)はブラジル代表のアリソン(リヴァプール)が選ばれている。
今年の授与中止が発表されるや、ソーシャルメディアでは本来なら誰が受賞するはずだったかをめぐって議論が沸騰した。最も多く名前が挙がったのは、メッシのほか、これまで5度受賞しているポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウド(ユヴェントス)、ポーランド代表のロベルト・レワンドフスキ(バイエルン・ミュンヘン)らだ。
選手の評価では、客観的な根拠として得点数やアシスト数が言及されていた。ただ、バロンドールの選考では次の3つを基準にすることが求められている点は知っておいたほうがよいだろう。「その年の個人および集団としてのパフォーマンス(受賞歴)」「選手の卓越さ(才能、フェアプレー)」「選手としての経歴」である。
重要なのは、「その年」というのが暦年であることだ。つまり、欧州で一般的な8〜9月ごろに開幕するシーズンではなく、1月からの1年間が対象となる。たとえば、2019年のバロンドールは同年1月から11月ごろまでの活躍が評価され、12月2日に受賞者が発表されている。これは、シーズン単位で選考される国際サッカー連盟(FIFA)の最優秀選手賞などと違う点だ。
そういうわけで、今年のバロンドールの「幻の受賞者」に想像をめぐらせる場合、「2019〜20年シーズン」で考えると見当外れになってしまう。
FIFAも先ごろ2019〜20年シーズンの最優秀選手賞授与の中止を発表している。フランス・フットボール誌やFIFAの決定に納得できないファンもいるかもしれないが、今は普通の時期ではなく、サッカーシーズンも不完全なスケジュールのせいで例年とはかなり状況が違っているということを、わたしたちは認めるべきだろう。
フランス・フットボール誌は全世界に180人いる審査員に、今年のバロンドールなどの受賞者の代わりに、オールタイムのベストメンバー11人を選んでもらうことにしている。史上最強の「ドリームチーム」は年末に発表される予定だ。