高校生の可能性を最大化! 「オンライン修学旅行」「にゃんます大作戦」

(左から)「にゃんます大作戦」プロジェクトの橋新功一、増子彩夏、葉山裕基


増子は、これまで自身で開催した合宿を通して多くの高校生の変化を見てきた。とはいえ、一方で、「お金がなくて合宿に参加できない。遠い場所での開催に、一人で行くことを親に反対される」と届けたい高校生に届けられないという経済的、地理的問題があった。それをクリアしようと無料のオンラインイベントも開催したが、上位1割の情報感度の高い高校生しか参加しないという問題も出てきた。であれば、自分で会いに行こうと決めたのが、全国行脚だった。

東京での新型コロナウイルス感染者の増加にともない、今夏の全国行脚はできなくなったが、オンラインでの相談会からはじめる。「米国NPOのストーリー・コー(StoryCorps)のように普通の高校生の声を聞き、対話できたら」(葉山)。また、全国各地の教育関係者ら高校生をサポートする人たちに向けた「21世紀を生きる子どもへの大人の関わり方」というオンライン講演会も、教育界のトップランナーたちを招いて、これまで7回開催してきた。

「自己開示や『自分にもできる』と思うには、次の3つが大事だと思っています。『できるよ』と後押ししてもらえること、将来をイメージできること、安心安全の関係性を築いて本音を語ること。高校生たちがこれらをできる環境を整えて、やりたいことをやっていいんだという思いになってくれたら」(増子)

増子と橋新は、トビタテ!留学JAPAN9期生で、ETIC.が提供する起業家育成プログラム「MAKERS UNIVERCITY」5期生。インド留学中に、ホームレス状態の方のみが出場できるストリートサッカーの世界大会「HOMELESS WORLD CUP」でインド代表コーチを務めた経験もある橋新も次のように話す。

「『人の可能性を最大化すること』に興味がある。これまでスポーツやサッカーを通じて教育に関わってきた。今回、高校生を応援することで、僕自身も改めてキャリアを模索していきたい。自分自身への実験でもあります」


(左から)「オンライン修学旅行」プロジェクトのキュリー代表取締役の王昌宇、河本直敏(常翔学園高等学校3年)、ウィルドア共同代表理事の竹田和広、溝口和愛(滝川第二高校2年)

全国の高校生たち15人が中心となってオンライン会議を行っている。その議題は「オンライン修学旅行をどのように行うか」。コロナ禍で中止になった修学旅行などのイベントをオンラインで行い、「今しかできない青春をここに」という思いではじまった取り組みだ。その「オンライン修学旅行プロジェクト」の中心にいるのが、プロジェクトリーダーを務める、学生団体the same sky代表の溝口和愛(滝川第二高校2年)、河本直敏(常翔学園高等学校3年)のふたりだ。2人はそれぞれ別の学生団体を通して出会い、溝口が河本を誘う形で今回のプロジェクトに参加した。

「オンラインだからこそできる経験や出会いを『一生の思い出』にして、明日からまた生きていく元気を届けるプロジェクトにしたいです」

決められた修学旅行のルートを辿るのではなく、自分たちでゼロからアイデアを出していく。だからこそ、「アミューズメントパークの裏側に行けないか?」「ゲームの桃太郎電鉄のようにゲームをしながら全国各地の地元を紹介することはできないか」「全国各地の地元料理を教えあう教室ができないか」など、さまざまな議論が繰り広げられている。まずは8月中にバージョンゼロを開催し、11月もしくは来年3月での本開催を目指しているという。

「自分たちのやり方でやりたいと思っています。また、企業などと関わって、自分たちの世界を広げていきたいとも考えています」
次ページ > 支えるのは起業家2人

文=山本智之、写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 8月・9月合併号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

ForbesBrandVoice

人気記事