合言葉は「Hack The World」みんなで世界を能動的に書き換えよう

左から、Hack the Worldを主催するNPO法人ETIC.チームの小国士朗、山崎光彦、太田旭、同代表理事の宮城治男、赤尾紀明、森本絵美、米慈善団体のビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団日本駐在代表の柏倉美保子、同日本代表補佐の平井光城ら、多様なメンバーが集う


若者18.3%問題と起業家精神


若者における起業家精神の醸成を支援する―このプログラムの背景には1つのデータと1つの思いがある。データとは、日本財団「18歳意識調査」で出た結果だ。「自分で国や社会を変えられると思う」と考える日本の若者は18.3%。米国65.7%、中国65.6%、インド83.4%、インドネシア68.2%と比較すると明らかに低い。思いとは、次の言葉に象徴される。

「尖ったビジョンを持つ若者と、そうでない若者は大きく違うのか、というと、必ずしもそうではない。『自分には何かできるかもしれない』と思うためのきっかけをつくれれば、思いも行動も変わる」(宮城)

プログラムのはじまりは、ビル&メリンダ・ゲイツ財団とETICとが出会った2019年5月にさかのぼる。12月に議論が始まり、東京五輪の開会式に合わせて、プログラムの開始を決めた。同財団・日本駐在代表の柏倉美保子は次のように話す。

「日本は世界と比較した場合、世界を改善するアクターがこれから最も伸びうる国だ。そのゲームチェンジャーになるのは若い世代。日本の若者をエンパワーして、政策や市民社会、社会起業家などの力で、社会にいい変化を生みたい」

その後、新型コロナウイルスの影響で東京五輪の延期が決まるなど、想定外のことが起きたが、オンラインで開会式を実施することを全員参加で決めた。開会式では、ミュージシャンのMIYAVIがメインパーソナリティーとなり、トークセッションなどが行われる。また、冒頭の寺本らが手がける、次世代の医療者1000人の決意や願いを集めて交換日記形式でリレーする「生きるための交換日記」プロジェクトや、高校生が修学旅行をハックして最高の体験をつくりだす「オンライン修学旅行」プロジェクト、自分たちから高校生に会いに行く「にゃんます大作戦」プロジェクトなど、ここから生まれた若者主導の新しいプロジェクトがはじまる。


左から、「にゃんます大作戦」プロジェクトを行う、桐蔭横浜大学客員研究員の橋新功一、発起人の東京大学教育学部の増子彩夏、東京大学経済学部の葉山裕基。Hack the Worldでは、Z世代から日本発で世界に仕掛けるデジタルムーブメントを募集する「Be The CHANGEムーブメント」など、開会式を機にプロジェクトが開始する

「答えがない時代。さまざまな世代や人たちが『Hack』することが社会のムードを変える。大企業の若手社員もコンセプトに賛同してくれ、大企業版『Hack The World』の動きもある」(宮城)

「オンライン修学旅行」プロジェクトに挑む高校生たちに伴走する、地域・教育に関わるウィルドア共同代表理事の竹田和広は次のように話す。

「僕はSDGsや世界を変えること自体にはそこまで興味がない。ただ、守りたいものはあるし、笑顔にしたい人もいる。身の回りの3人でも笑顔にできれば世界を書き換えているといえるし、それを何百万人がやれば、日本は笑顔になる」

20年7月24日。ここから、ひとり、みんなの小さな理想から、世界をHackするムーブメントがはじまる。

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN Forbes JAPAN 8月・9月合併号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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