【対談】ウィズコロナの都市デザイン考 ピクトグラムの源流はスペイン風邪だった

デザイン事務所「NOSIGNER」代表の太刀川英輔、都市戦術家の泉山塁威


1898年に英国の経済学者エベネザー・ハワードが提唱した田園都市構想。聞いたことがありますか。これは豊かな自然に囲まれた都市・庭園のような環境があることを示唆するものですが、日本でも田園調布など郊外住宅地で取り入れられました。

戦後の日本で「人口過密状態をどう解決していけば良いか」という視点から距離(=ソーシャルディスタンス)を確保するために田園都市構想が取り入れられ、「工場と住宅を離して、住宅の周りに豊かな自然がある環境をつくろう」という動きが強くなったんですね。

これは裏を返せば「心地いい適度な距離感がある、清潔な都市に住みたい」というニーズの表れでもあります。その行き着く先として、いまの東京・丸の内にみられるように再開発による清潔な街が形成されたのだと思います。

「密」の課題をクリアする街が出現


泉山:歴史を振り返ってみると、感染症をきっかけに街は大きく変貌を遂げてきました。しかし、感染症のタイミングでゼロから何かが生まれたわけではない。感染症をきっかけにして、水面下で起きつつあった事象が表面化し、一気に変化が加速したといったような記述の仕方が適切かと思います。

この視点でみると、今後は「ソーシャルディスタンス」を楽しむまちづくりの価値が急速に高まってくるのではないでしょうか。

太刀川:これからは働き方もさらに多様化するでしょうし、リモートワークも広がり続けると思います。過去の時代のパンデミックと違うのは、コロナ禍を生きる私たちにはインターネットを介したデジタル空間が存在しているということです。「ソーシャルディスタンス」が当たり前になっても、遠隔でコミュニケーションがとれるテクノロジーを用いれば、同じ時間を共有して協働を続けることができます。


足で踏むと「あのゲーム」でお馴染みの音が。楽しみながらソーシャルディスタンシングを実践できる

でもリアルな場所が全くなくなってしまうわけじゃない。そこで「PANDAID」の活動のひとつとして、リアルな場所でもゲーム感覚でソーシャルディスタンスを確保できる「LIFECOIN ステッカー」を制作しました。ゲームコインのように見えるステッカーは、足で踏むと人感センサーによって「コイン音」が鳴る仕組みです。こういうちょっとした工夫があると楽しいですよね。

このステッカーは、病院や市役所の窓口・スーパーや飲食店レジの前・バス停や駅のホーム、券売機など、人の混雑が予測される場所の床に貼って使っていただきたいんです。ソーシャルディスタンスを、少しポジティブで、テンションが上がる楽しいものにしていきたいと考えています。

次回の対談では、世界各都市の街づくりについてお届けする。

文=加藤朋子

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