温暖化でホッキョクグマが2100年までに絶滅の危機、研究論文

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地球温暖化で北極の氷が減少することで、ホッキョクグマが絶滅の危機に瀕していることを示す論文が7月20日、科学誌のネイチャー・クライメート・チェンジに掲載された。論文では、北極に生息するホッキョクグマの多くが2100年までに姿を消す可能性が指摘された。

ホッキョクグマは氷上でアザラシを捕獲して食料にしているが、温暖化で氷が溶けることにより飢餓に追い込まれる。その結果、北極の最南端の地域で暮らすホッキョクグマたちが絶滅すると、研究チームは述べた。

ニューヨーク・タイムズ(NYT)の記事によると、アラスカ北東部とカナダのハドソンベイ周辺のホッキョクグマの生息地では、既に多くの氷が溶け出しているという。カナダのアルバータ大学でホッキョクグマの生態を研究するAndrew Derocherは、NYTの取材に「温暖化はクマたちに大きなダメージを与えることになる」と述べた。

コロラド州ボールダーに本拠を置く米国雪氷データセンター(NSIDC)の統計によると、1970年代以降に北極海の氷の13%が失われたという。

NYTによると、ホッキョクグマの人口は約2万5000頭という。ホッキョクグマの各個体の体重は最大750キロにも及び、生きるためには多くの食料が必要だ。今回の論文の主執筆者のPeter MolnarはNYTの取材に、ホッキョクグマは既に食糧不足にあえいでいるが、温暖化により夏の北極では多くの地点で完全に氷が消滅していると指摘した。

米国の保守系のシンクタンク「ケイトー・インスティチュート(Cato Institute)」は2016年に、今から6000年から9000年前に温暖化が進んだ最終氷期の終わりの時代を、ホッキョクグマが生き抜いたことを根拠に、温暖化で彼らが絶滅することは無いと主張した。

しかし、今回の論文の著者は「当時のホッキョクグマはクジラなどを食べて生きていた」と、この見方を否定した。

2017年にはナショナルジオグラフィックが撮影した、飢餓に苦しむホッキョクグマの姿を収めた動画がネット上で拡散されたが、その際にも北極海の氷が溶け出していることが指摘されていた。

編集=上田裕資

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