ゲイツ財団は「組織文化」をこう変えた|逆境を生き抜く組織カルチャーVol.4

ミネルバ大学アソシエイトディーン グローリア・タム氏


ゲイツ財団の改革


具体的に組織文化の変革を試みた例として、数年前のゲイツ財団でのプロジェクトをお話しします。同財団の、アジアオフィスの組織文化の変革を担当しました。

当時、財団全体の戦略として、アジア(インド、中国)の役割を見直す時期に来ており、創設者のビルとメリンダ・ゲイツ夫妻もアジアの重要性を感じていました。支援の矢印を「グローバル・米国→アジア」から、「アジア→アジア」、さらに言えば「アジア→グローバル」へと変えていかなければならない時期で、その役割の変化に応じた新しいマインドセットを組織内に構築する必要がありました。

戦略的に見て、アジアが世界に貢献できることはたくさんありました。例えばマラリアに対する新しいワクチンや安価な薬がそうです。アジアは多くの薬を安価に生産できる能力があり、アフリカなどを支援するのは理にかなったことでした。ただ、この変革は、アジアオフィスの人たちのマインドセットを変えれば良いだけではなく、ゲイツ財団の世界中に散らばる拠点のリーダーたちに理解してもらい、協力してもらう必要がありました。

彼らの中には、文化的な、もしくはその他の信念を持っている人たちもいるかもしれません。そのような状況の中では、コミュニケーションが最も重要な鍵になります。アジアでもアメリカでも、財団の内部の人たちだけではなく、たくさんのステークホルダーとも話をしました。パートナーやブランチといった、より広範なエコシステムの人たちとも話をしました。この全体の変革の形をどう考えるか、聞いて回りました。

これが現状診断のステージです。あらゆるステークホルダーを巻き込むことがとても重要です。すべては「新しいふるまい」をうながすためのインタラクション、受容、信念の構築のプロセスなのです。

他の事例でも概ねそうですが、ゲイツ財団の事例でも、組織変革の流れを大きく加速させたのは「自信」でした。変革のプロセスは混乱するものです。そんな中で、コミュニケーションやエビデンス、データや事例を提供することは、自信を高める効果があります。

透明性もとても重要です。例えば、アジアオフィスには多くの開発費が振り分けられ、重点的な人材配置も受けることになることを、世界中のオフィスが納得する必要があります。組織の中に透明性を確立することはクリティカルです。意思決定力やチームの統制を失うのではないかと不安になるかもしれませんが、明確化とすべての人との共有が鍵となります。

Vol.5「ミネルバ式『深く潜る』リーダーシップ思考とは何か」に続く

編集=岩坪文子

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