ビジネス

2020.07.22

元メルカリの2人が「グロース」領域のアップデートに取り組むワケ

Growth Campの樫田光(左)と山代真啓(右)


実際、シリコンバレーではグロースが存在する会社が多くあり、エアビーアンドビーのグロースチーム初期メンバーは、過去のプレゼンテーションでこんな発言をしている。

“いまや良いプロダクトやテクノロジーをもっていることは王道になり、まともに運営している殆どの会社はそのふたつを備えている。それでは何が差別化要因になるのか?それは “Great Distribution”であり、またそれはグロースそのものだ。”

グロースの基本的な構造を描く


スタートアップが急成長を遂げるにあたって“グロース”は必要不可欠であるにもかかわらず、国内にはグロースを専門として実行できる人材が十分いるとは言い難い状況にある。であれば、それぞれ異なる専門領域ながら、メルカリという会社の中でサービスの成長(グロース)という共通の目的をともに担ってきた2人で外部から“グロースを支援する”チームを立ち上げれば、日本のスタートアップシーンにインパクトをもたらせるのではないか。そんな想いから、Growth Campが立ち上がった。

サービスの成長のために必要な要素は数多くあるが、同社が考える“グロース”の要素は「Product」「Marketing」「Analytics」の3つ。これらのファンクション、およびそれらを駆使して行われる、サービス成長のための活動を総称して「グロース」と呼ぶという。


グロース の構造を表す「Growth Pyramid」※Growth Camp社提唱

まずはデータ分析を通じて、サービスの現状を正しく評価する。その上で、「ユーザーが金銭対価を払っても良いと思う価値の創出」の結果である“LTV(顧客生涯価値)”を高めていくのか、プロダクトをユーザーに届けるために必要な営業/宣伝活動の結果である“CAC(顧客獲得単価)”を引き下げるか、注力すべきポイントを特定し、可能な限りファクトに基づいたPDCAを回していく。

樫田曰く、グロースとは基本的に「LTV >> CAC」の状況を作り出し、なおかつコスト上で効率的な獲得チャネルにコストを大きく投下して、それまでとは桁の異なるユーザ数(Volume)をサービス内に迎え入れることだという。

「プロダクトが優れていればジワジワ広がっていくのというのはある程度正しいと思いますが、それなりに時間がかかってしまう。市場環境が変わったり、競合が出てきたりすることを考えると、一気にグロースすることが大事な状況も存在すると思っています。ただ、そのときにマーケティング費用を投下すればいいかと言われると、そういうわけではなくて。LTVと呼ばれるユーザーひとり当たりの売上と、CACと呼ばれるユーザーの獲得コストを見ながらグロース戦略を考える必要があります。

例えば、1000万円を投下して500万円の利益しか出ないのであれば、ユーザー数が増えていても施策としては失敗。そういった数値を見ながら、どういったグロース戦略がそのスタートアップにとって最も効率が良いのか。そういったことを考えています」(樫田)

LTVとCACの両方をバランスさせ、綱引きをベストな形で行うために、グロースにおいてはマーケティングとプロダクトは融和が必要不可欠。そして、数値を客観的に可視化して正しくPDCA活動を回すための“データ分析”がカギとなる、という。

「新型コロナウイルスで状況は変わりましたが、コロナ前まではスタートアップにとって資金調達の環境も良かった。その結果、プロダクトが十分に仕上がっていないのに『資金があるから』という理由だけでマーケティング施策に拙速に踏み込んでしまいがちな構造があったのも事実だと思います。そもそもグロースするフェーズに到達していないのに、CMなどの大規模なマーケティング施策を打っても意味がないので、もっと違うことをやるべきなのですが、プロダクトだけ見たり、マーケティングだけ見たりしていると、間違った意思決定をしてしまう。そこをGrowth Campでサポートしていければ、と思っています」(山代)
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文=新國翔大 写真=小田駿一

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