日本人が知らないエストニアのいま


外国人受け入れには複雑な国内事情も



スタートアップイベントで議論をする国際色豊かな起業家たち(筆者撮影)

実はこれまでもエストニアは、外国人を積極的に巻き込む政策を展開してきた。エストニアのスタートアップエコシステムの元祖といえばSkypeであるが、創業者はデンマーク人とスウェーデン人だ。外国人の創業ではあるが、今や「エストニア発のIT企業」として名を馳せている。

これは、エストニアが外国人とともに国内経済、そしてブランドを築き上げてきた好例だ。この成功体験をもとに整備されたのが、「スタートアップビザ」制度で、スケーラブルなITビジネス構想を持つ起業家を対象に、エストニアに滞在できるビザを発給している。

また、2014年から展開している電子国民プログラム「e-Residency」も外国人を巻き込んだプログラムのひとつだ。同制度を活用した法人設立数は約13000社となっており、同国への経済効果も4100万ユーロ(約50億円/エストニア政府発表)を超えるなど、同国への経済貢献が大きい。

今回のデジタルノマドビザで課されている所得下限の3504ユーロも、同国の平均賃金1404ユーロ(2020年第1四半期・Statics Estonia発表)を遥かに超える金額となっており、比較的高所得である外国人を同国に招き入れることで、継続的なインバウンド需要を期待していることも伺える。

このように、エストニアは外国人を巻き込みながら、経済効果の拡大を推し進めてきた。しかし、こういった流れに反発する動きもある。エストニアは1991年に悲願の独立を勝ち取ってから30年弱と日が浅く、外国人に対する不信感は一部で根強く残っている。

2019年の総選挙では、保守政党EKREが台頭し、議席の17.8%を獲得した。同政党は、外国人留学生の労働時間の制限や、家族の同伴を禁止する法案を提出するなど、外国人に対しては厳しいスタンスを取っている。しかし、外国人による経済貢献の大きさも同時に認めており、その帰結が今回のデジタルノマドビザ発給といえるだろう。

デジタルノマドビザの申請は8月1日から受付開始予定。エストニア政府の公式WEBサイトから申請書をダウンロードし、近隣のエストニア大使館へ提出する流れだ。エストニアでは、2020年から日本を対象としたワーキングホリデービザも解禁しており、コロナの収束後はこれまで以上に日本・エストニア間の往来が発生しそうだ。

連載:日本人が知らないエストニアのいま
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文=齋藤アレックス剛太

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