現地で生産されたテスラ車の6月の登録台数は過去最高の1万4976台に達し、「テスラは中国の富裕層を惹きつけている」と米国の経済メディア「ブルームバーグ」は書いた。
しかし、大多数の日本人にとって、中国政府のコロナ対応が遠い国の出来事のように感じられるのも事実だ。渋谷のスクランブル交差点から人が消えた今年のゴールデンウイークに日本のテレビは、中国でドローンが空からマスクの着用を呼びかける映像を繰り返し流したが、その光景はまるで近未来のディストピアを描くSF映画のようだった。
そんな中、インターネットを主戦場とする経済ジャーナリストが書いた一冊の書籍が、じわじわと支持を広げている。6月に発売された『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)だ。この書籍は、パンデミック発生後に中国で起きたことを克明に記録し、人々がどのように闘ったかを伝えている。
著者の浦上早苗さんは書籍の冒頭で、日本のメディアの中国についての報道は「“中国やばい”のワンフレーズに集約される」と書いている。中国に関する記事は、極端さを強調しないと一般ウケしないのだ。前述のドローンの話に関して言うと、これは「ITの進化や規模が半端ない」というお決まりのパターンの1つだ。
大手メディアの多くが思考停止に陥いる中で、筆者は各種のニュースサイトに執筆した中国関連の記事をまとめて一冊の書籍にした。そこで描かれるのは、スマホのGPSや監視カメラなどの最新テクノロジーを駆使し、凄まじいまでの管理で感染を抑え込んだ中国の姿だ。
「政府をあてにしない」中国人の強み
しかし、中国人たちは政府に盲目的に従ったのではなく、冷静にギブ・アンド・テイクの姿勢でデータを差し出し、それにふさわしい見返りを得たことが見えてくる。