ノイズの可能性

三井化学専用線(旧三池炭鉱専用鉄道)

コロナ禍の影響で、「今まで当たり前にあったものがなくなっていく」ということを、我々は、日々、目の当たりにしています。冒頭から暗い表現を並べてしまいますが、廃業、破産、撤退、閉店……最近こうした文字を目にする機会が増えていませんか?

老舗の飲食店、ライブハウス、さらには大手外食チェーンまで、今回のコロナ禍がなければ、おそらく普通に営業を続けていたであろう、まだ誰にとっても価値のある店や施設がバタバタとクローズしていく。

この状況は、決して飲食業界やサービス業に限った話ではありません。コロナ禍が予想以上に長期化していきそうな現状から想像するに、あらゆる業界や業種の企業において、今までその企業を支えていた企業の個性や象徴とも呼べる事業が、いつ整理されてもおかしくない状況に置かれていると考えるべきだと思います。

写真や映像に比べ余白が多い「音の資産」


もし、自分が関わっている事業や仕事がそういった状況、クローズせざるを得ない状況に置かれたら、あなたならどうしますか?

そう聞かれても、クローズが決定事項であるなら、その事業をただ粛々と畳むしかないというのが、普通の答えかと思います。しかし、本当にただそれでいいのでしょうか。他の選択肢はないのでしょうか?

整理されることになったその事業が、例えば企業を支えた象徴であり、企業のオリジナリティに満ち溢れたものであったら、ただ畳むのではなく、何かしらの形で、その事業、その仕事を残すことが、その企業ならではの、その企業らしさを保つことに繋がると私は考えます。

でも、実際のところ、どう残すのかは非常に難しいところです。その事業にまつわる大量の書類やデータをとっておく、写真や映像で記録を残しておくということは簡単ですが、結局、こうした記録はしまい込まれてしまい、ただ畳んだのとほとんど同じという結果になりかねません。

その企業のブランディングに繋げていくには、何らかの形で、この記録が「継承」され、世の中との接点を持ち続けていく必要があります。

私は、こうしたケースにこそ、写真や映像に比べて想像を掻き立てるための「余白」が多い、「音の資産」として残していくというやり方が有効だと考えています。

音楽アーティストやイラストレーター、写真家などさまざまなクリエイターたちとコラボレーションし、彼らの魂を音として「余白」に吹き込んでもらうことで、単なる過去の記録としてではなく、この先の未来にも意味を持つ、ポジティブな形で「企業らしさ」を継承していくことができるからです。

文=安藤 紘

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