スポーツ科学の専門家が出した、マスク着用ランの心肺への負担


<結論>


高強度の運動では、マスク着用により心肺への負担が大きくなるほか、運動強度が高くなるにつれて、負担も増大することが分かった。

検証結果2 10人中10人が「マスク着用時の方が身体的負担が大きい」


主観的な運動強度に関するアンケートの結果、ランナー10人全員が「マスクを着用した時のランニングの方が身体的な負担が大きい」と答えた。ランニング上級者でウルトラマラソンの完走経験もある上野陽貴さんは、「マスクを着用して走ると、汗で湿り息が吸いにくくなった。また口を大きく開かないと息が入ってこなくなり、鼻呼吸も難しい。マスクを着用していない時と同じ距離は走れないと思う」と述べている。

上野さんの写真
ウルトラマラソン完走経験もある上野さん

<結論>


心理的に呼吸のしにくさ・圧迫感を感じるのと同時に、マスクが呼気や汗によって発生した水分を含むことで、呼吸の制限を強めていることが分かった。

人が多い場所では、ゆったりとしたペースでのランニングを推奨
マスク着用が推奨されている社会的距離(ソーシャルディスタンス)を保てない場所でのランニングでは、低~中強度(80%VO2max以下)のゆったりとしたペースでのランニングが望ましいと考えられる。また、高強度のランニング(90%~100%VO2max)を実施する場合は、人混みを避けた上で、マスクを着用しないで行うことを推奨したい。

ランニングは2m離れよう

VERSATRパフォーマンススペシャリスト/元東京ヤクルトスワローズ アスレティックトレーナー 橘内 基純 博士(スポーツ科学)のコメント


「年々、健康増進やスポーツを楽しむことを目的にウォーキングやランニングを行う方が多くなってきている中、自粛期間を踏まえてより一層の方が参加するようになったと感じます。楽しさ、快適さ、身体健康の変化を感じることで運動の継続性は高まりますが、一方で呼吸や運動自体の苦しさ、疲労や心理的ストレスなどは返って継続性の低下を招いてしまうでしょう。

マスクを着用した上でのランニングは、心理的な不安や圧迫感に加えて、循環機能に対する影響もあることが今回の結果から推察されると思います。自身や他者への影響も少なく、安全かつ健康的にランニングを継続するためにも、適切な強度やペースを守った上で行うことにより、より楽しく快適さを感じながら続けることができると思います」

VO2max(最大酸素摂取量)
最大酸素摂取量の100%の強度の運動:スポーツ選手や上級者向けの運動。短時間で疲労困憊となり、長時間続けることが難しい強度。
最大酸素摂取量の80%の強度の運動:持久力を高める、中級者向けの運動。「ややきつい」「会話することが難しい」と感じる強度。
最大酸素摂取量の50%の強度の運動:健康増進のための運動。「かなり楽である」「楽である」と感じる強度。

マスク着用の激しいランニングではトレーニング効果が低下 「マスクラン」トレーニングでの効果向上は期待できず


長距離ランニングのトレーニングにおける重要な要素の1つは「最大酸素摂取量(VO2max)の向上」で、100%~120%VO2maxの運動強度が必要。検証結果から分かるように、マスクを着用し呼吸が制限されている状態で、120%VO2maxのトレーニングを行うことは困難であるほか、長時間にわたる継続的なランニングができなくなる。

また、呼吸がしにくい状態で負荷の高いトレーニングを行うと、最適な動きではなく無理な呼吸を強制する「代償動作」によるトレーニングを実施することになり、必要以上の疲れや身体の左右のバランスの差が強調されるため、怪我に繋がる可能性がある。このように、マスクを着用した状態での激しいランニングでは、トレーニング効果が上がらず危険なうえ、高地トレーニングのような効果向上は期待できない。



実証実験概要
場所:TREAT内 ー STRIDE PERFORMANCE CENTER(多摩市)
実施日時:2020年6月24日(水)
被験者:ランニング中~上級者(26歳~57歳)男女10名
温度:24℃ 湿度:56%

コロナ禍における運動意識に関する調査の概要
調査方法:オンラインアンケート
調査対象:全国の20歳~69歳のアルトラユーザー男女1324人
調査期間:2020年6月13日(土)~6月15日(月)

PR TIMESより

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