EVが実質無料に 欧州で進む補助制度拡充

Photo by Miles Willis/Getty Images for Go Ultra Low

欧州諸国の一部では、電気自動車(EV)の購入に対する補助金が増額されており、ドイツでは特定の販売店に行って2年のリース契約を結ぶと、一銭も支払うことなくルノーのEV「ゾエ」を持ち帰られるほどにまでになっている。

ドイツでは国からの補助金が最近倍増され、ゾエのリースに必要な頭金と月125ユーロ(約1万5000円)のリース料が全て賄えるようになった。保険は自己負担で、2年間使用した後にそのまま手元に残したい場合は追加料金が発生するが、これは読み間違いでも、何か裏があるわけでもない。ドイツでは誇大広告に重い罰金が科される。EVが無料で手に入るのだ。

このキャンペーンを立ち上げた企業ケーニッヒには数千件の問い合わせが殺到しているが、人手が足りないため短期間での需要に対応しきれず、これまでに成立した契約は300件余りにとどまっているという。他のモデルでは、一部の販売店がMINIクーパーSEを月26ユーロ(約3200円)、BMWのi3を月115ユーロ(約14000円)で提供。また別のドイツ販売店カーフェローズでは、小型のスマートEQの価格が月9.9ユーロ(約1200円)となっている。

ドイツ以外の欧州諸国もEV補助金を増額。クロアチアでは1万1800ユーロ(約144万円)、ルーマニアでは1万1100ユーロ(約136万円)、ポーランドは9900ユーロ(約121万円)、フランスでは7700ユーロ(約94万円)の補助が受けられる。一方のスペインはというと、ディーゼル車やガソリン車への補助を続けており、他国で売れない自動車の処理場と化している。このまま行くと、排気量が基準を上回る車はすべてスペインへ売られることになるだろう。

欧州連合(EU)は来年、新車の二酸化炭素排出量を1km当たり96gに制限する予定。違反には重い罰金が科されることから、自動車メーカーにとってEVの市場投入は必須だ。2030年より首都アムステルダムでの非EV車流通を禁止するオランダでは、EV購入補助金として用意された1000万ユーロ(約12億2300万円)の資金がわずか8日間で底をついた。

十分なペースではないものの、輸送の脱炭素化は進んでいる。ディーゼル車やガソリン車はいわば動く大気汚染源であり、いずれは過去の遺物として博物館行きとなるのは間違いないだろう。今後数年以内、2020年代中頃には、EVの価格や維持費は化石燃料車よりも著しく低くなるだろう(電気代とディーゼル・ガソリン価格やメンテナンス費を考慮すると、もう既に多くの場合でEVの方が安上がりとなっている)。そうなればもちろん、国の補助がなくともEV市場は拡大するだろう。

自動車市場の将来像を疑う人は、目を覚まして新鮮な空気を吸うべきだ。

編集=遠藤宗生

ForbesBrandVoice

人気記事