悲惨指数
ひとつめは「悲惨指数(misery index)」だ。これは経済的な悲惨さを測る指数で、経済学者アーサー・オークン(Arthur Okun)が考案した。もともとは、消費者物価指数の上昇率と失業率を加算して算出されていたが、現在は、さらに金利を足してから、1人当たり実質GDPの変動率を差し引いた数値が悲惨指数となる。この指数が、現職大統領の1期目に上昇すれば、現職大統領、あるいはその所属政党が敗北する傾向にある。その逆の場合もしかりだ。
これに当てはまった大統領には、ビル・クリントンやロナルド・レーガン、ジョージ・W・ブッシュなどがいる。
となれば、ドナルド・トランプ大統領は今年、ちょっと苦境に立たされることになるかもしれない。新型コロナウイルスの感染拡大を受けたロックダウン(都市封鎖)で、失業率が急上昇したからだ。2020年4月には2000万以上の人が失職。唖然とするようなこの数字は、あらゆる記録を塗り替えた。それに比べれば、物価上昇率はいまのところごくわずかなので、今年の状況を占ううえではさほど重要な要素ではない。
4月を境に雇用状況は改善し、数百万の職が創出されている。問題は、大統領選挙が行われる11月までに、十分な雇用が創出されて失業率がわずかながらも上昇し、トランプ政権維持に向けた追い風が吹くか、それとも、対立候補にホワイトハウスを譲り渡すかだ。ここでは予想を控えよう。けれども、投資家や政治家はこの指数に目を光らせておくべきだろう。
S&P500
大統領選を予想する際のカギとなるもうひとつの指標は、株価指数のS&P500が7月31日から10月31日までのあいだにどのようなパフォーマンスを見せるかだ。金融調査会社CFRAのアナリストたちによると、S&P500が上昇すれば、82%の確率で現職の所属政党が勝利するという。逆に、それと同時期に株価が下落すれば、88%の確率で野党が勝利するとCFRAのアナリストたちはみている。
株価の動きを予想するのは、状況が良い時でも難しい。パンデミック中の今は、なおのこと容易ではない。株価がさらに上昇することはもちろんあり得るだろう。とはいえ、政府による再度のロックダウンが相次げば、株価が急落してもおかしくはない。
わかっているのは、これまでこれら2つの指標が、大統領選の勝者を予測するうえで好成績を残してきたということだけだ。従って、事情通の投資家なら、この2つの指標から目を離さないようにするだろう。
両政党はそれぞれ、まったく異なる経済政策を掲げている。それはつまり、どちらが政権に就くかによって、成功する業界が違ってくるということだ。最終的にはそれが、どの銘柄の株価が上昇するのかを左右することになるだろう。