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2020.07.27

DX時代は「データベース」活用が鍵に オールドメディアの勝ち筋

新聞各社などオールドメディアならではのデータ活用法も考えられる (Shutterstock)


ある新聞社幹部はいまだに「どこかに若い優秀なWEBプロデューサーはいないか」と頭を抱えている。時代はもう「WEB」ですらない。デジタル領域全体を俯瞰しなければならない。残念ながら、それほど優秀な若手が、彗星のごとく現れ、斜陽産業を救ってくれることはない。今の若手なら自ら起業し、デジタル・メディア立ち上げるか、新規アプリ開発を手がけている。

新聞社においても若手は、気づくとヤフーを始めとしたデジタル・メディアへと流出している。

ヤフーは以前からオリジナル・コンテンツの制作には消極的だった。だが2012年9月、各種専門家を「オーサー」に据え、「Yahoo!ニュース個人」と冠したオリジナル・コンテンツをスタート。新聞社が弱体化しても、自社コンテンツ制作可能な体制を着々と築いている。コンペティターであるMSNの元ニュース・プロデューサーとして、私自身がそのオーサーのひとりであった点は、我ながら皮肉でもある。

前回記事において「トピックス」はビビッドな見出しを14文字以内で編集する点をお伝えしたが、文字数制限により言葉足らずの誤解を招くケースもある。その影響力は甚大なだけに、社会的責任はまぬがれない。

先日、鹿児島で新型コロナウイルスのクラスターが発生した際のヤフートップ、トピックスの見出しは「鹿児島 パブで計36人集団感染」だった。「パブ」と言えばもちろん、アイリッシュ・パブやブリティッシュ・パブのように、いわゆるパブリックにビールなどの飲める飲食店を指す。

ところがこの「パブ」とされた店の営業形態はまったく異なる。店名には「ショーパブ」と記され、飲食店ではなくどころか享楽店だ。これにより、自粛明けにせっかく営業を再開したパブやバーなどの飲食店は、この余波を受け再び休業を余儀なくされた。

オールドメディアのデータ活用法


さて本題に戻ろう。既存の新聞社はデータ活用に不向きかと言えば、決してそうではない。

米「ニューヨーク・タイムズ」紙は、早くからデータ・アナリストを登用、400万人の有料ユーザーを囲い込み、ひとつの成功例を提示している。だが、同紙の提携先である朝日新聞はこうしたデータ活用に学んでいるように思われない。いまさらSEO対策に特化したアフィリエート記事作成に本腰を入れている現状がある。読売新聞はコスト削減のためにも、社員による記事の内製化を徹底し、定年した記者を呼び戻してまで「紙面」充実戦略に注力すると幹部から聞いている。

5Gの登場やAIの進歩は、メディアにとって新しい変革をもたらすチャンスだと、以前も唱えた。新聞各社は、この契機に戦略をもって取り組んでほしいものだ。
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文=松永裕司

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