ビジネス

2020.08.05 14:30

新型コロナで大打撃の中小企業 フィンテックが救う可能性


従来の融資モデルは、信用調査書上のプラスおよびマイナスのデータを、融資側が閲覧できるという金融システムに基づいて構築されています。そして、財政状態が改善されつつあっても、新興国では十分なクレジットスコアリングを得るのは困難です。たとえ中小企業が、監査済み財務諸表や、納税申告書、5カ年計画を用意できたとしても、処理に何週間もかかる申請の末に、ローンを組める可能性は低いままです。

AIを利用した新たな融資モデル


近年、中小企業向けのフィンテック・レンダーが増え、より速く、簡単で、費用効果が高く、透明性の高い、新たな融資モデルの提供を始めています。成長を後押しする融資の提供と引き換えに、中小企業は自分たちが持っているデータを初めて共有できるようになりました。最先端のアナリティクス・プラットフォームとAI(人工知能)を利用して、取引データやオルタナティブデータ(中小企業のキャッシュフローを示す、銀行預金残高証明書のようなシンプルなデータ)を評価することで、フィンテック・レンダーは融資先の中小企業をより深く理解できるようになっています。そして、事業の信用度や、リスクをより簡単に評価し、わずか24時間で融資を行うことを可能にしています。

今日では、データとAI(人工知能)を駆使した革新的で新しいソリューションの方が、中小企業の資金調達ニーズに応え、切迫した財政危機から救い出す上でより適切で、中小企業の可能性を解き放つ手助けになると言えるでしょう。

新興国では、ヨーロッパやアフリカでローン貸付を行っているLidyaのような中小企業向けデジタルレンダーが、他のスタートアップ企業と同様に、150ドルのような少額の融資を可能とし、新しい経済への道を切り開いています。新たな融資モデルは、新世代の起業家の活動により自由を与え、中小企業に成長の機会をもたらし、富と雇用の創出、経済の多様化の促進、さらには、借入手法の民主化を後押しします。特にこの時代、中小企業にとってLidyaのサービスは重要なクレジットラインであり、世界におけるロックダウンの措置の影響から、需要が高まっています。

しかし、これはまだ始まりに過ぎません。データのやりとりを促進するパートナーシップが、中小企業向けデジタルレンディングの未来にとって極めて重要になります。規制当局、テック系の大手企業、中小企業向けサービスプロバイダー、保険会社、信用調査機関、銀行、金融機関、または他のセクターのオルタナティブ・レンダーが、中小企業の信用格差を改善すべく連携する責任があります。政府の経済対策に加えて、こうしたパートナーシップが、新型コロナウイルスの経済的影響との闘いの後押しになるでしょう。

新型コロナウイルスによる長期的な経済的影響は、まだ明らかになっていません。ローンの需要は既に増大しており、新型コロナウイルスの蔓延は金融業界のデジタル化を加速化することになるでしょう。世界中の新興国で、新世代の起業家に必要な資金調達が一層容易になることが期待できるでしょう。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Tunde Kehinde, Co-Founder, Lidya / Ercin Eksin, Co-Founder, Lidya

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