メディアが招く分断、新型コロナと向き合う歌舞伎町

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事実を事実として受け止め「夜の街」の未来をつくる


今、行政と一緒に公衆衛生に関する講習を受けられる仕組みをつくろうと思案している。飲食店を開業する時には食品衛生管理者を置かなければいけない。同様に感染症予防に関する管理者のようなものを作れないかと考えている。

その資格を作るのには時間が掛かるだろうから、行政主導で、感染症研究所の調査の協力をすると共に、定期的に講習を開いて、受講したことをホームページなどで公表するようにして、「この店には何人の受講者がいます」というようにするのはどうだろうか? という計画を立てている。

これまで関わった、新宿区の行政の方々、保健所の方々、そして厚労省の感染症の専門の方々は、ホストクラブの実情に真摯に向き合い、歩み寄って現実的に感染予防について考えてくれている。それに呼応するように、夜の業界も検査と実態調査の協力に取り組んできた。しかし、感染者数が増加したことは紛れもない事実だ。それを受け止めて、早急な対応をしなければいけない。決して開き直ってはいない。そして被害者面する気もない。

事実を事実として受け止めて、具体的にどう対処していくか──。ただ、それだけなのだ。

「コロナに罹ることが悪いことではない」


感染は土地に根付くものではなく人に根付く。人と人の感染を防ぐ意識を持つことが最も大事なことだ。しかし、「夜の街に行かない」といった、「場所や業種に関わらないことが、感染防止」という認識を持ってしまうことは感染症の本質の考えからズレてしまう。

そして、「夜の街」「ホストクラブ」と業種や地域を名指しすることは、今後いかなる業界で、地域で、陽性者が出たとしても名乗り出づらくなるのではないだろうか。

6月の頭から保健所の方々が再三言ってくれた言葉。「コロナに罹ることが悪いことではない。いつ誰がどこで罹るかわからない。大事なのは罹った人が大事に至らないこと、感染を拡げないこと」という言葉が、ホストクラブが集団検査に応じることになった大きな理由だ。

いつ誰がどこで罹るかわからない感染症。罹った人を責め立てる風潮は、隠蔽意識を増長させるのではないだろうか?
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文=手塚マキ

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