ビジネス

2020.07.22 12:30

エコバッグだけじゃない 「トレーダー・ジョーズ」が人気を集める理由


実際、トレジョの接客にはとても定評があり、フレンドリーで、ちょっと購入を逡巡している客にはすぐに店員から声がかかる。筆者の体験でも、レジを通す店員に無愛想な人がいたことがない。

逆に、この文化を守れない接客態度の悪い従業員には、会社として厳しく注意や指導を与えていたという報道も見たことがある。

複数の従業員に取材したエリザベス・シャーマン氏によれば、採用時には、スキルや経験以上に、トレジョらしいフレンドリーな接客ができる人物かどうかを見極めることに比重が置かれ、それは職場の雰囲気にも良い影響を与えており、従業員の2割が10年以上も働いている人たちだという。

これは、小売業界全体で6割の人間が1年以内に転職するということや、あるいはアマゾンでの平均就業年数が1年、グーグルで同1.1年ということを考えると、すごい数字だ。

ワインコーナーに注目


他の店で売ってない品物をというこだわりは、コロンビー自身がたくさんの買い付けを指示しただけでなく、自ら店に出る商品の試食にも精を出していたことからもわかる。コロンビーの息子によると、いつも彼は自宅に試食品を持ち帰り子供たちに試食させて意見を聞いていたという。

前述したようにトレジョの店舗はそれほど大きくはない。平均的なアメリカのスーパーマーケットが5万点の商品を扱うのに対し、トレーダー・ジョーズはその10分の1もない4000アイテム前後で、その8割が自社ブランドだ。

そのため、単位面積あたり最も売上を上げるスーパーマーケットであり、それはライバルとみなされるホールフーズ(現在はアマゾンの子会社)の2倍の数字だ。

全米42州にあるとは言え、たった500店舗ほどしかないため、多くのファンは、筆者を含め、わざわざトレジョに買いに行くのだ。

余談だが、コロナ禍が終息して、アメリカへ旅行をする際には、トレジョのワインコーナーをぜひ見てほしい。ほとんど一期一会のようなものだが、その時良いカリフォルニアワインが入っていると、それはコストコさえも叶わない手頃な値段で出していることがある(販売量がコストコの要求する量に届かず、コストコが敬遠している場合が多いためだ)。

店に出すワインに関しては、かつてコロンビーがすべて自分で試飲してから購入を指示したというだけあって、トレジョのワインはいまでも私たちの期待を決して裏切らない。

連載:ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
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文=長野慶太

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