まだ、新型コロナウイルスが発生する前のことだった。山田はすぐに開発をスタートさせ、2週間ほどでリリース。1月末には「Product Hunt」「Hacker News」など、世界的にも読まれているメディアでLPを展開。なかでも、Hacker Newsでは大きな反響を得た。
「Hacker Newsでは、件名に『Show HN』とつけると、プロダクトのレビューをしてもらえる仕組みがあります。Remotehourをリリースしたとき、LPとともに通話できるセクションを用意。そうすると、フランスやインド、アフリカ、香港など、Hacker Newsを見た世界中の人たちから2分に1回のペースでコールが鳴り続けました!(笑)」(山田)
またたく間に世界中でバズり、一晩で一万人以上がLPに訪れた。翌週には、オンライン型アクセラレーター「Pioneer」のトップランカープログラムの招待が届く。これは世界各国の誰もが参加できるプログラムで、毎週日曜日に開発進捗を報告。参加者同士でフィードバックし、その評価ポイントの高さを競う。常に順位は変わるが、Remotehourは起業家トーナメントで1位を獲得している。
5年かけて、やっとスタート地点に立てた
グリーンカードの当選、Hacker Newsでの世界的なバズり、Pioneerからのトップランカープログラム招待。思わず身を任せたくなるほどのチャンスの連続が、逆に山田を奮い立たせる。
「これまでの失敗や経験は、Remotehourに出会うための試練だと感じた瞬間でした。今回の機を逃したら、起業家失格だと追い詰め、やれることは全部やろうと思っています。Hacker NewsでのLP展開も、今の僕にできる準備の1つでした。
嬉しいことに、Pioneerに参加し、プロダクトづくりを手伝ってくれるエンジニアが増えつつあります。とは言え、まだ給料を払えるレベルではないので『楽しそうだ』と思ってくれる人に頼っている感じではありますが。今後はマネタイズするため、ユーザーからコミッションフィーをいただくかたちでの課金機能を実装予定です」(山田)
Remotehourはビジネスマン向けかと思われるが、山田がメインターゲットとして考えているのは大学教授や医者などだ。
「大学教授や医者、フリーランスなどは、複数の授業や患者、プロジェクトを抱えています。Remotehourは、誰か一人がハブになり、それにまつわる複数の人が立ち代わりにやりとりするイメージでつくりました。すでに、大学教授の方などがそういった使い方をし始めています」(山田)
インタビューの最後に「5年かけて、やっとスタート地点に立てました」と山田は言う。その目線の先に立っているのは、長谷川とAnyplaceの内藤聡だ。
「あの2人に比べると、僕はまだまだです。だから、火がつきますよね(笑)。最近では、ようやく現地の投資家たちと普通に話せるようになってきました。僕としても、日本人による海外の成功事例が増えればいいなと思っています。その事例になれるよう、頑張りたいですね」(山田)