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2020.07.20

機関投資家を中心に組成 VCのインキュベイトファンド、250億円ファンド設立

左からインキュベイトファンド代表パートナー・赤浦徹、同・本間真彦、同・和田圭祐、同・村田祐介


──投資領域は変わるのか。

3つある。「伝統的産業領域におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)」、医療、教育、インフラ分野など「公共サービスのイノベーション」「先端テクノロジーの社会実装におけるイノベーション」のシードスタートアップに投資をしていく。

1点目のDX領域で感じていることは、大企業でDXを担当していたエース級人材がスタートアップ創業、起業家へ向けて動き出している点があげられる。負の構造を理解した起業家の増加は、よりこのDX領域における大企業xスタートアップの流れを加速させるだろう。

3点目のディープテックを始めとした研究開発型スタートアップは、投資先である、視聴触覚技術のピクシーダストテクノロジーズ、内視鏡の画像診断を支援する人工知能開発のAIメディカルサービスのような、研究者、医者とコンピュータ・サイエンスを掛け合わせるハイブリッド型スタートアップに手応えを感じている。

また、2点目のパブリックセクターに関しては、新しいテーマに見えるかもしれない。とはいえ、長年レガシーが放置された領域で、かつ、TAM(実現可能な最大市場)が大きい。海外VC業界では、もっとも注目されている領域だ。

内閣府が7月14日に発表した「スタートアップ・エコシステム グローバル拠点都市」(戦略拠点は、東京、大阪・京都・神戸、名古屋・浜松、福岡)の動き。また、米国でイノベーションを生み出す原動力となったSBIR(スモール・ビジネス・イノベーション・リサーチ)の日本版も20年度中に、制度を規定する法律を科学技術・イノベーション創出活性化法に移して制度開始を目指している。科学技術振興費を中心に、関連予算の一部をスタートアップに振り向けるという。

こうした動きに象徴されるように、私たちの投資領域3分野は、大企業、行政の投資領域とスタートアップ領域が重複しはじめ、よりスタートアップが成長できる、かつ、大きな市場となることを予測している。

日本のスタートアップへの資金供給について、リーマン・ショック以降のような供給減少を予想している人がいる。しかし、当時とは異なり、金融市場に痛みが少ないこともあり、同様の動きは起きないだろう。近年、高まっていた機関投資家によるVCアセットへの関心は、コロナを経てもまだあることが、今回のファンド設立で証明できたのではないか。


むらた・ゆうすけ◎インキュベイトファンド代表パートナー。スタートアップの創業を経て2003年よりエヌ・アイ・エフベンチャーズ(現:大和企業投資)でネット系投資部門の投資責任者を務めた後、10年にインキュベイトファンド設立。Forbes Japan誌「日本版Midas List(最も影響力のあるベンチャー投資家ランキング)」17年第1位。

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文=山本智之

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