現在は営業時間短縮を受けて、逆に前倒しをして午後3時からバーを開けることで、シンガポールに「昼飲み」文化を定着させようと考えている。実際、早い時間からフードを楽しみながらお酒を飲む顧客が増えた手応えを感じているそうだ。
「今は耐えるべき時期ではありますが、必ずしもマイナスではありません。これからのバー文化や、我々の店にとっても、新しいチャレンジの時期だと思いっています」と金高氏は語る。
デリバリーボトルを持つ金高氏(写真右)、チーフバーテンダーの佐藤健太郎氏(写真左)
各バーがそれぞれの形でニューノーマルの世界でのあり方を探求していく中、アワードを主催する「世界のベストレストラン50」事務局も、バーやレストランに対する支援策を打ち出した。
その一つに「Bid for Recovery」というオークションがある。
「世界のベストレストラン50」に名を連ねる飲食店関係者の意見を集約し、飲食にまつわる体験プログラムをオークション形式で発売。業界の復興を目的に、123万ドル(約1億3000万円)もの募金を集めた。
また、シェフやバーテンダーからレシピを集め、10ドル以上の募金をすれば購入できる、自宅で作ることのできる英語のレシピ集も販売している。
9月には「50 Best for Recovery Summit」という、飲食店同士が話し合い、未来に向けての計画を策定していくためのイベントを行う予定だ。
「1人のバー愛好家として、バーに行けることに、よりありがたみを感じるようになりました」という「世界のベストレストラン50」のコンテンツ・エディター、マーク・サンソム氏は、新しい時代を切り開く鍵はクリエイティビティであると強調した。
「バーテンダーは、世界でもっともクリエイティブな人々です。だからきっと打開策を見出し、人々に素晴らしいドリンクを提供し続けると信じています。
ウィズコロナの期間中は、ソーシャル・ディスタンスを取るために、席数を少なくするバーが増えるかもしれませんが、その代わりに、よりよいサービスを提供できるようになれば良いのです。
バーテンダーはより一層努力してイノベーティブになり、それぞれのバーを魅力的にしようとするでしょう。クリエイティビティが、成功と競争に打ち勝つ鍵となるはずです」
自粛による「制限」を逆手に取ったサービスの数々は、新しい楽しみ方を消費者にもたらし、ニューノーマルの世界での新しいライフスタイルをも形作っていくはずだ。