アジアNo.1のバーが打ち出した「ウィズコロナ」戦略

「Jigger & Pony」のスタッフ陣。中列右から4番目、紺のジャケットに白シャツの男性が江口氏

ここ数年、アジアのバーシーンで注目を集めてきたのが、シンガポールだ。

去年に引き続き、今年もシンガポールで行われる予定だった「アジアのベストバー50」の授賞式(去年の様子はこちら)は、残念ながらコロナの影響で、オンライン授賞式での発表となったものの、そこでは日本にとっても、嬉しいニュースがあった。

アジアNo.1に輝いたのは、シンガポールの「Jigger & Pony」。

実はこのバー、日本人の江口明弘氏が、系列店5店を含めて統括する、バー・プログラム・ディレクターを務める店なのだ。

授賞式が行われた5月21日時点では、シンガポールは不要不急の外出を禁じる「サーキットブレーカー」期間中。面と向かって祝うことはできなかったものの、世界中からの江口氏へ、お祝いの電話やメッセージが殺到したという。

日本で「バー」というと、カウンターのみのこじんまりした店を思い浮かべるが、欧米やシンガポールでは広いスペースでワイワイと楽しめるバーも多い。

「Jigger & Pony は140席の大きなバーですので、大人数でももちろん、一人や二人でも快適に過ごせる席も用意して、色々な用途で使って頂けるよう工夫しています。日本的なバーの技術ときめ細かいサービス、海外ならではの気軽にカクテルを楽しむことのできる雰囲気の両方を併せ持っているのが強み」と江口氏は語る。

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用途に応じたレイアウトで「どんなシチュエーションでも、Jigger & Ponyに行けば大丈夫」という安心感がある。

そんなJigger & Ponyの対応は早かった。サーキットブレーカーに入った当日からデリバリーを開始したのだ。

「普段バーを利用しない層もターゲットにするために、試行錯誤しながら始めました。その結果、オーダーが入ってからカクテルをパックするスタイルに行き着きました。

カクテルをボトルに詰めたボトルカクテルでは容量が大きくなってしまうのと、シンガポールでは、アルコール度数が高くないといけないなどの制限があるからです」。

その日に消費することを前提にしていたので、フレッシュジュースなどの生ものや、飾りに使うハーブやフルーツもパックに入れて、バーと同じ再現度の高いカクテルを提供した。

「手間がかかりますが、マンパワーだけはありましたから。自粛期間の最後の方は忙しくて、スタッフ65人で総力戦でした。カクテルの種類も、常時30種類以上用意していたので、狙った通り様々な層の方に注文を頂きました」

一回分をパックにするため、容量も少なくボトル代もかからず、比較的値段を抑えられたことで、企業などの大口注文にもつながった。

在シンガポールの欧米企業などから、福利厚生の一環として、自粛期間中の社員宅へのデリバリーなど、100個口単位での注文が入り、結果として、通常と変わらない売り上げをキープすることができたという。
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文=仲山 今日子

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