ビジネス

2020.07.17 17:00

家ごはんの新たな選択肢 「出張料理」が食の悩みを解決する




現在の「シェアダイン」は訪問型で専門家が3時間あたりで約16食分を用意する。このようなサービスは高額というイメージがあるかもしれないが、3時間で平均額が8000円。最安値では6800円(交通費込・税抜)の定額となり、食材費を加えても16食分で割ると約600円台となる。お弁当との価格競争にも劣らない。ライフステージにあった料理を専門家が提供し、シェフをリコメンドする設計となっている。チャットでのヒアリングを事前に行い、家族の好き嫌いに調整したメニュー作りも行う。

このサービスを必要としている人は、利用者だけでなく作る側にもいると徐々に感じるようになった、と井出氏はいう。

「自分たちの課題からユーザ側の視点で事業を始めましたが、続けているうちにシェフの方にもニーズがあるサービスだと感じるようになりました。(新型コロナウィルスの影響で)飲食店事業が休業していることもあり、出張シェフを希望するお問い合わせも急増しています。コロナ前にも外食産業は停滞していた面もあり、これからは店舗だけでなく家庭内でもこういったサービスに頼る時代が来るのではないかと思っています」

限界のある個人事業主のシェフを救うサービスにも


個人で事業を成立させていく難しさはどの業種にも存在するが、料理の専門家にも該当する。シェアダインのようなプラットフォームは個人のシェフにもお客さんとも繋がりやすい環境を作り出している。

登録されているシェフは、約720名。5月にはコロナの影響もあり、新規シェフ登録のペースが5倍へと増加した。登録するシェフには自ら店を開いたり、日々同じメニューを調理したりとはまた違ったチャレンジが待ち構える。彼らにとっては、制約がある中でも相手の顔を見ながら独創性を追求する機会となる。

実は、サービス開始の2年間ではシェフの数をどう増やしていくかが大きな課題だった。

老舗の専門学校と共に作り置きを専門とする資格を生み出し、ここを卒業した生徒にもアプローチ出来るようになった。更には管理栄養士や調理師の資格を持った専門的な人たちを加える仕組みもどんどん確立していった。

「マッチングモデルは提供する側をどうやって獲得していくかが重要。私たちのサービスは家事や料理代行とは違い、現場経験のある資格を持った人たちがその家庭に合ったものを提案して作っていくプロフェショナルなサービスになっています。提供者側の獲得で家事代行や家政婦というワードは一切使ったことがありません」

あくまでも専門の調理師やシェフに拘って、個人に寄り添うサービスを提供している。日本でも増えてきている管理栄養士や調理師にも自分のライフステージに合った労働環境を提供する。特に女性はライフステージが変わると、病院などでの厳しい勤務時間から退職せざるを得ない状況もある。だが、実際は安くない授業料を払い専門学校で学んだ経験を家庭に入ってからも活かしたいという相談も多かった。必要とする者同士をつなげるそんな役割も「シェアダイン」は果たしている。
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文=新川諒 人物写真=小田駿一

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