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2020.08.05

コロナ禍の10代。スマホ世代の「らしさ」と、窮屈な日常

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生活行動~外出行動を家の中での行動で代替、大学生で比較的大きな変化


1|全体~学校のかわりに自宅で勉強、外で会うかわりにメールやLINE、運動が減り、過半数で睡眠増加


次に、生活行動について捉える。15~19歳に対して、新型コロナ感染拡大前と比べて、生活行動で増えたものをたずねたところ、最も多いのは「自宅での勉強」(54.3%)であり、次いで僅差で「睡眠」(51.0%)、「友人との交流(メールやLINE、電話等)」(49.0%)、「家族と過ごす」(43.8%)と続き、いずれも半数程度を占める(図表6)。なお、「特に増えたものはない」は9.8%を占める。

一方、減ったもので最も多いのは「友人との交流(会う、出かける)」(61.4%)であり、次いで、「外出(アルバイトや通学以外)」(55.5%)、「学校での勉強」(48.6%)、「部活やサークル活動(オンライン含む)」(34.5%)、「運動(部活等以外で)」(30.2%)と続く。なお、「特に減ったものはない」は13.3%を占める。

つまり、「学校での勉強」が減る一方で「自宅での勉強」が増える、「友人との交流(会う、出かける)」が減る一方で「友人との交流(メールやLINE、電話等)」が増えるなど、これまで家の外で行っていた行動を家の中で代替するようになった結果、家の中で過ごす行動が増え、外出を伴う行動は減っている。さらに、運動時間は減る一方、睡眠時間は過半数が増えている状況もある。

図表6 15~19歳の生活行動で増えたもの・減ったもの(複数選択)(n=420)
15歳から19歳の生活行動で増えたもの減ったもの
(注)上から増えたもので多い順

2|属性別~影響が大きいのはオンライン講義への対応が進み、外出の自由度が高い大学生


生活行動で増えたものについて、属性別に見ても、おおむね全体と同様の傾向を示すが、女性や大学生では「自宅での勉強」や「睡眠」が、このほか女性では「家族と過ごす」が、大学生では「アルバイト」が全体を上回る(図表7)。

 図表7 属性別に見た15~19 歳の生活行動で増えたもの・減ったもの(複数選択)

(a)増えたもの

属性別の増えた行動減った行動
(b)減ったもの
属性別の減ったもの
(注1) 順位は全体のもの(注2) 斜体は参考値(注3) 全体より±5%に色つけ(参考値を除く)(注4) 学生種別で「その他」、家族との同居状態で「該当しない」を除いた結果

生活行動で減ったものについても、属性別に見ても、おおむね全体と同様だが、女性や大学生、家族と別居では「友人との交流(会う、出かける)」が、このほか女性や大学生では「学校での勉強」、「アルバイト」が、また、大学生では「外出(アルバイトや通学以外)」や「部活やサークル活動(オンライン含む)」、「運動(部活等以外)」が、家族と別居で「家族と過ごす」が全体を上回る。

以上の属性別に見た生活行動の増えたものと減ったものをあわせると、大学生での増減が目立つ。つまり、コロナ禍で生活が比較的大きく変わったのは、15~19歳の中では大学生と言えるだろう。図表8に、大学生について生活行動で増えたものと減ったものを図示すると、あらためて「友人との交流(会う、出かける)」や「外出(アルバイトや通学以外)」などの外出行動の減少や「自宅での勉強」の増加が目立つ様子が見える。

今年は多くの大学で卒入学式が中止された。また、大学では中学校や高校等と比べてオンライン講義への対応が進んでいる
4)。こうしたことから、平常時から外出行動の自由度が高く、行動や交流範囲も広い大学生では、中高生等と比べて、外出や通学機会等が比較的大きく減ることで、家の中での行動も比較的大きく増えたのだろう。

図表8 15~19歳のうち大学生の生活行動で増えたもの・減ったもの(複数選択)(n=108)
大学生の生活行動で増えたもの減ったもの
(注)上から全体で増えたもので多い順

おわりに~10代は休校で大人より早くから生活が変化、次稿では10代の不安を捉える予定


3月初旬の政府による全国一斉休校要請によって、10代は大人より早くから新型コロナによる生活変化の影響を受けている。その変化にはスマートフォン世代らしさや、行動や交流範囲の広い大学生で影響が大きな様子が見えた。進学や就職を控える10代では社会情勢の急速な変化に対する不安も大きいのではないだろうか。(コロナ禍での10代の不安についてのレポートはこちら

なお、本稿で用いた調査は継続して実施予定であり、行動変化の状況が今後も続くものなのか等を分析していく予定だ。


4 文部科学省「新型コロナウイルス感染症対策のための学校の臨時休業に関連した公立学校における学習指導等の取組状況について」(令和2年4月21日)より、オンライン指導への対応は公立小中高校等の5%。一般社団法人私学労務協会「緊急アンケート集計結果速報」(令和2年5月14日)より、私立のオンライン授業への対応は高校75%、大学87%。

文=久我尚子(ニッセイ基礎研究所 主任研究員)

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