ビジネス

2020.07.28

試練の壁をどう打ち破るか? 新規事業に「守破離」が効く理由

Luis Alvarez /Getty Images


事業「運営」ではなく事業「経営」を


多くの企業人は、少なからず、その企業を創業し大きくしてきた創業世代への尊敬の念を抱きながら、日々の業務にあたっているのではないでしょうか。これは、創業の意思を自身のものとして社会と向き合い貢献するすべを探求する、社会における自己確認の作業であり、アイデンティティの問題とも関係すると言えるかもしれません。

もちろん、創業世代への尊敬の念は大事なものではありますが、それが崇拝であった場合、そしていつまでもそれに固執した場合、企業の成長や社会の発展に寄与することはできないと、私は考えています。

創業世代からすれば、早く自分たちを追い越し、世界を圧倒する事業を創造して欲しい、新しい価値を社会に提供をしてほしいと願っていることでしょう。ひと足飛びに創業者の偉業を越えることは容易ではありませんが、後進の人間たちが創業世代の偉業に届かないのであれば、その企業が縮小していくのは容易に想像できると思います。

現代のビジネス環境は猛烈なペースで変化し、時にはこれまでの常識が覆るような大きな変化や根本的な変化をもたらす事象も起きています。このような激しい変化の時期に、単調に事業運営しているだけでは、この大きな波を乗り越えることはできません。現在の日本企業では、前任者や上司の教えを金科玉条のように守り、「事業経営」ではなく、単に「事業運営」をしているだけのような例が多く見受けられます。

ビジネスに従事している限りは、まずは前任者を超える、そして次に上司を超える、さらには入社した頃の役員や社長、そして創業者の成果を越えることを目指すべきです。必ずしも同じ事業領域にこだわる必要はありません。さらには、その企業を離れて新たな企業でチャレンジしてもいいのです。過去に事例があるように、あえて子会社を選び、親会社を追い抜くような存在に成長させることを目指すのも良いかと思います。

多様なキャリアや働き方が許容される現代においては、チャレンジの選択肢は無限に広がっているのです。

バブルの破綻以後「失われた30年」などと言われるようですが、最近では、ひと昔前までは日本では皆無であったエンジェル投資やベンチャーキャピタリストによる投資も活発に行われるようになり、数々の有望なスタートアップも生まれてきています。

ユニークな視点や未知の市場を目指したさまざまな新たな試みが行われており、ユニコーンと言われる規模に成長したスタートアップも続々と現れ始めました。私は、こういった状況に大いに期待しており、今後の成果が楽しみでなりません。

皆さんも「守破離」を心に刻み、現行事業の価値を超える新しい事業の創造に挑戦していただければと思います。多くの事業が過去の延長線上での成長や進化に苦労しているいまだからこそ、そしてこれまでの価値観が強く揺さぶられている時だからこそ、新たな挑戦をしていく人々にとっては最大のチャンスなのです。

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文=茶谷公之

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