社会変革を推進する、芸術と文化の力
シュワブ財団は、世界経済フォーラムのカルチュラルリーダーのネットワークと提携し、文化、ウェルビーイング(幸福)、社会変革の間の結びつきを深める調査をしています。芸術と文化によって意識が形づくられ、個人的経験が処理されるという考えは、新しいものではありません。歴史の中で、人々は芸術を通じて癒しを得て、世界とは何かを探求してきました。その結果、社会のシステム、欠陥、願望、成功といったものへの洞察が、文化的なアウトプットによって捉えられてきました。
新型コロナウイルス感染拡大の危機の渦中で、創造的な表現は切迫した様相を帯びてきています。例えば、存亡の危機に取り組むべく芸術の力を示すといった形です。
「パンデミック(世界的大流行)の猛攻撃に、文化はどう対抗することができるでしょうか? 第一に、私たちは、自分の中に存在する文化と共に生き延びます。私たちが頼りにするのは、長年にわたり無意識に浸透し、意識的に獲得してきた内なる文化なのです。 芸術と文学は、こうした心の中に培われてきた内なる文化を浮き彫りにし、可視化し、形と個性を与えてくれます」──ベン・オクリ
2008年に実施されたカナダのビジネス調査によると、回答者の86%が、芸術は、より調和がとれた健全なコミュニティを形成するのに役立つと信じていて、回答者の88%が、芸術は健康とウェルビーイング(幸福)にプラスの影響を与えていると考えていることがわかりました。経済学的な言い方をするなら、芸術はそのコスト以上の見返りをもたらす、ということです。世界保健機関(WHO)により発行された別のレポートでは、芸術と文化は、人生のあらゆる段階で心身の健康に総合的にプラスの影響をもたらすことが確認されています。
「文化は社会の接着剤です。コミュニティを結びつけてくれるものであり、常に進化し続ける世界で社会変革を行うには欠かせない役割を担っています」と、世界経済フォーラムのスペシャリストであり、カルチュラルリーダーでもある、リンダ・ピーターハンスは述べています。「カルチュラルリーダーのネットワークは、この声を世界経済フォーラムのより広範囲の検討事項に含めており、全てのステークホルダーに、よりレジリエントで包摂的な社会の構築に向けて、共感し創造的に考えてもらえるよう求めています」。
「優れた芸術は、共感を生み出し、共感は変化をもたらす」──シャーミーン・オベイド・チノイ(ドキュメンタリー映画監督・クリスタル賞受賞者)
カルチュラルリーダーたちは感情と知性に訴えかけ、社会変革の推進力となっています。このシリーズを通して、そうした先駆的な声は、社会起業家コミュニティを結びつけ、勇気を与え、新たな次元に押し上げ、社会起業家が健闘し続けられるよう支えていくでしょう。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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