経済・社会

2020.07.18 06:00

米景気の早期回復は幻か FRB、楽観論から一転警戒モード

FRB議長のジェローム・パウエルと米財務長官のスティーブン・ムニューシン(Photo by Tasos Katopodis/Getty Images)

米連邦準備制度理事会(FRB)の幹部らは当初、新型コロナウイルスの感染拡大による米経済の悪化について、深刻ではあるものの今年4〜6月期に限定されるとやや楽観していた。だが、ここへきて、高い失業率や企業破綻リスクの上昇を伴いながら景気後退(リセッション)が長引く事態に備え始めたようだ。

感染拡大の第2波が深刻化し、すでに低迷している米経済に一段の打撃を与えるというシナリオが現実のものとなるなか、FRBの高官たちはこの2〜3週間で、公の場での発言のトーンを協調して変えてきたように見受けられる。

アトランタ連銀のラファエル・ボスティック総裁は14日のオンラインセミナーで、経済活動は「危機前よりも低い水準で横ばいになっている」ように見えると語り、この状態は、以前の予想よりも回復にもう少し時間がかかることを示唆しているのかもしれないと続けた。

先ごろ公表された6月の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録でも、複数の当局者が「感染拡大の新たな波が来る可能性はかなり高く、実際にそうなった場合、一部のシナリオでは経済をさらに混乱させ、場合によっては経済活動の低下を長引かせかねない」ことに懸念を示している。

もっとも、第2波が起きていない段階ですら失業率は急激に悪化しており、回復には何年もかかる公算が大きい。

ボストン連銀のエリック・ローゼングレン総裁もフィナンシャル・タイムズのインタビューで、「米国ではなお多くの地域で市中感染が起きており、こうした事態は公衆衛生面だけでなく経済面でも引き続き問題になるだろう」と語っている。

ローゼングレンは、状況が悪化するにつれて、これまではあまり使われていないFRBの緊急融資プログラムへの需要が高まるとも予想している。

サンフランシスコ連銀のメアリー・デイリー総裁も、米経済が完全に回復する過程について厳しい見通しを示している。

デイリーは15日、ワシントン・ポストのオンラインライブイベントで、確固とした緩和戦略やワクチンによって新型コロナウイルスの流行を制御できれば、経済活動をすみやかに元に戻せると発言。ただし、その場合も回復には「4〜5年」を要するだろうとし、「経済への打撃が広がり、また長引くことになれば、回復にはもっと時間がかかるかもしれない」と話した。

編集=江戸伸禎

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