ビジネス

2020.07.24

10日で1億4000万円 クラファンがコロナ危機にもたらした光

baranq/Shutterstock.com


狭くて深いところに届けるのに適している


一方、地元の人しか知らないような店舗が数百万や数千万円の支援を集めているのもコロナ禍に見られる傾向の1つだ。背景には支援者たちの、「お世話になった人や店に恩返ししたい」との想いが見え隠れする。

例えば、「高田馬場【居酒屋わっしょい】存続支援のお願い!」プロジェクトだ。「わっしょい」は高田馬場で31年間、早稲田大学の学生や地域住民に愛されてきた居酒屋だ。新型コロナの影響で売り上げが激減し、代表の中之村俊氏が途方に暮れていたところ、常連客から「クラウドファンディングを使ってみては」と助言を受け、挑戦に踏み切ったという。

「従業員の生活と、この店を守るために」そんな中村氏の切実な願いに、早大の卒業生や常連客がすぐさま反応した。「心の故郷わっしょい!」「わっしょいは私の青春の場所です」。こうしたコメントとともに、プロジェクトには約2週間で1000万円以上の支援金が寄せられ、最終的には2625人から2000万円以上が集まった。

ちなみに、リターンには3000円で「わっしょいオリジナルペアジョッキ」、8000円で「赤ちゃん用わっしょいグッズ」など、なかなか個性的なアイテムが並ぶ。

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「高田馬場【居酒屋わっしょい】存続支援のお願い!」プロジェクトを立ち上げた、居酒屋わっしょい代表の中之村俊氏

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8000円の支援でもらえる「赤ちゃん用わっしょいグッズ」。ロンパース、Tシャツ、ヨダレかけの3点セット

「全国的には知られていない店舗のプロジェクトほど、馴染み客などに『自分が支援しなくては』と思わせる力がある。狭くて深いところに届けるのに適しているのがクラウドファンディングだ」と篠原氏は言う。

クラウドファンディングを通じて、疎遠になりかけていた人や場所とのつながりを取り戻す。物理的な距離を縮めるのは難しくても、心の距離は近づけられる。分断より連帯を選ぶ人たちの姿に、ウィズコロナ時代の微かな希望を感じる。

最後に、篠原氏からアドバイスされたクラウドファンディングの「成功の秘訣」を3つほど、お伝えしよう。再び新型コロナウイルス感染拡大の兆しが見られるなか、利用を検討している人は、ぜひ参考にしてほしい。

1. 多くの人が関わっていることを伝える

募集のメーン画像には、プロジェクトの立案者やメンバーが写っているものを選びたい。著名人が協力・賛同しているプロジェクトなら、顔写真と共に、その旨を伝えると信頼性が高まる。

2. 割安感や希少性などが明確なリターンを設定する

飲食店なら「3000円で4000円分の飲食が可能なチケット」など、支援者のメリットが明確なリターンを用意すると、多くの人から支持を集めやすい。

3. プロジェクト開始前からSNSで予告する

「開始から24時間以内に目標額の3分の1以上を集められると、期限内にゴールに到達する可能性が高まる」(篠原氏)。CAMPFIREの場合、プロジェクトのプレビュー画面をSNS上で公開できる。資金調達スタートの数日前から情報拡散を始め、初動の速さにつなげよう。


1人でできることには限りがある。でも、思いを共にする人たちが力を合わせれば、世の中にポジティブな変化を起こすことができる。クラウドファンディングの盛り上がりを機に、挑戦し続ける人たちを応援する空気が日本中に広がってほしいと心から思う。

連載:SDGs時代の、世界をよくする仕事の作り方
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文=瀬戸久美子

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