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とはいえ、日本文学と韓国文学とでは大きな違いもある。日本文学の主流を担ってきたジャンルの一つに「私小説」があるが、仮に日本文学の特徴が、個の内面と向き合い精神の葛藤を通じて深化していくところにあるのだとすれば、逆に韓国文学の特徴は、公の問題と向き合い政治的な葛藤を通じて社会へと開かれていくところにあると言える。

世界経済フォーラムによれば、2020年のジェンダー・ギャップ指数は153か国中で韓国が108位、日本が121位であり、両国においてジェンダー格差は深刻な問題となっている。日本に先んじて韓国のフェミニズム文学が世界から注目を集めた一因には、韓国文学が培ってきた社会問題への鋭い感性が評価されたという側面があるのかもしれない。


1984年生まれのチョン・セラン ⓒ목정욱

世界進出を支えた韓国文学翻訳院


近年の韓国文学の世界的躍進の背景には、韓国文学翻訳院という国家機関の後押しがある。韓国文学翻訳金庫を前身として、韓国文学を海外に広めることを目的に2001年に政府によって設立された。質の高い翻訳を世界的に展開するために海外の出版社を後援するとともに、プロの翻訳家の育成講座などもおこなっている。斉藤は韓国文学翻訳院の事業について次のように語る。

「韓国文学翻訳院の事業のひとつとして、海外の出版社への支援が行われています。外国文学が売れないと言われていた日本の状況にあって、制作費の一部が助成されることは、非常に仕事をやりやすくしました。翻訳出版への助成自体は台湾など他の国々もやっていることですが、韓国政府は特にこれに積極的な印象があります。最新の韓国文学の魅力を伝えるために、出版社を韓国に招待するツアーもありました。ある意味では韓国文学翻訳院がやってきたことが、いまの人気に繋がっているのだろうとも思います」

北米やヨーロッパでも韓国文学が読まれるようになった背景には、長い時間をかけて翻訳家の育成に力を入れてきた「韓国文学翻訳院の努力がある」と斉藤は指摘する。映画分野では、第92回アカデミー賞でポン・ジュノ監督による映画「パラサイト 半地下の家族」が作品賞、監督賞、脚本賞、国際長編映画賞の最多4部門を受賞するなど快挙を成し遂げた。世界的に韓国文学の紹介が進んでいけば、次はノーベル文学賞受賞者がでる未来もそう遠くないかもしれない。

文=渡邊雄介

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