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いざ出版に踏み切ってみると、読者の評判は良く、幾人かの批評家たちが太鼓判を押した。またテレビ朝日のバラエティ番組「アメトーーク!」の企画「読書大好き芸人」でも、オアシズの光浦靖子によってパク・ミンギュ『ピンポン』(白水社、訳・斎藤真理子)が紹介されるなど、2017年の段階ですでにじわじわと注目が集まり始めていた。

2018年12月に出版された『82年生まれ、キム・ジヨン』のヒット後は、韓国文学の売れ行きは全体的に変わってきた。当初は若い女性をターゲットにしていたが、現在では読者層は50代女性にも広がっている。また中学校の図書館にも作品が置かれ始めていることから、出版社には10代の読者からの感想も届くようになったという。いまや韓国文学は多くの人の手に取られるようになってきたのだ。

若い韓国作家たちの海外カルチャー受容


『アンダー、サンダー、テンダー』を書いた1984年生まれのチョン・セランを筆頭に、現代の韓国文学の人気を支えている作家の大部分は比較的若い世代の女性たちである。チョ・ナムジュは1978年生まれであり、またハン・ガンも1970年生まれだ。

斉藤によれば、70年代以降に生まれた彼女たちの作品の特徴の一つは、エンタメ的な要素を文学表現の中に取り入れる巧みさだという。純文学という枠組みに重きを置く韓国の文学界が押し付ける「小説とはこうあるべき」という足かせを、彼女たちは軽やかに外してみせる。


亜紀書房にて〈となりの国のものがたり〉シリーズを担当している編集者の斉藤典貴

「70年代生まれ以降の若い作家たちは、日本を含む海外のカルチャーをごく普通のこととして享受してきた世代だったと思います。ですので、かつての世代が日本へと抱いていた複雑な思いは少なくなり、日本の文化も単に隣の国の面白い文化として気軽に受容するようになった側面があると思います」

植民地時代の苦難の記憶を持つ世代にとっては、戦後の日本文化はコンプレックスの対象でもあったが、若い世代にとってみればとりわけ偏見や憧れを抱く理由もない。彼女らは日本を含む海外のカルチャーを率直に「面白いもの」として享受してきたはずだ。「日流(イルリュ)」という言葉もあるが、民主化以降の90年代に入ると日本の文学やドラマは韓国でも支持を得るようになる。

2015年の出版統計によると、韓国で出版された新刊4万点のうち、10%近くが日本語からの翻訳出版であったという。日本のエンタメやサブカルチャーの積極的な受容は、その後の韓流文化にも大きな影響を与えている。

文=渡邊雄介

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