ビルはCEO時代に似たような状況を経験したときのことを話した。ビルと経営陣はある戦略について合意したが、いざビルが取締役会でその戦略を発表すると、計画を受け入れていたはずのCFOが、ビルには賛成できないと言い放った。会議のあとビルは、もう戻ってくるなと言った。たとえ決定に不満があっても、合意したことには全力で取り組まなくてはならない。それができないなら、チームの一員じゃない。
これはブラッド・スミスがビルの後任としてインテュイットに就任した際にビルから教わった、「アーサー王の円卓」型の意思決定モデルだ(ブラッドはこの話をしながら、オフィスの片隅に飾られた、「円卓の騎士」のミニチュア模型を見せてくれた)。
しっかり議論をすれば、10回のうち8回は、部下が自力で最適解にたどりつくだろう。だが残りの2回は君が苦渋の決断を下し、全員が従ってくれることを期待するしかない。
円卓には上座がないが、その背後には玉座がなくてはならない。
(本原稿は、エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル著『1兆ドルコーチ──シリコバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え』〈櫻井祐子訳〉からの抜粋です)