熊本地震をはじめ過去の災害では、ペットとの「同伴避難」「同行避難」も課題となった。環境省は「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」をまとめ、公開している=2016年4月、熊本地震の発生に伴い熊本市内に設置された避難所で(筆者撮影)
──被災者が避難所へ避難する際に持参した方がよいものはありますか。
マスク、除菌シート、ビニール袋はよく言われていますが、これに加えてうちわとスリッパもあった方がいいですね。
水害は蒸し暑い時期に発生することが多い災害です。新型コロナ対策でマスク着用が前提となりますので、より暑さを感じるでしょう。うちわがあるだけで違うと思います。避難所では足を洗えないことも多いでしょう。スリッパがあればある程度の衛生面の管理ができます。また、スリッパを脱ぎ、履き替えすることで、居住スペースと通路などの共有スペースの切り替えも期待できます。
あとこれは運営側が用意できれば理想なのですが、役場に置いてあるような3種類の老眼鏡です。避難所では思いのほか何かを記入する機会が多くあります。熊本地震の際は、高齢者から「老眼鏡がなくて困った」という声が聞かれました。
マスクと消毒液は私たちの生活に必需品となった。それ以外に準備しておくべきものは(Photo by Buddhika Weerasinghe/Getty Images)
情報発信の「目的」を明確にする
──新型コロナについてはまだ不確かな部分も多く、情報との向き合い方が難しいと個人的に感じています。これは災害時の情報発信のあり方にも影響を与えるものなのでしょうか。
新型コロナに限りませんが、情報発信者への「信頼」がなければ、受け手とのコミュニケーションはうまくいきません。言い換えると、情報発信者に対して受け手が「不信感」を抱いた瞬間、その情報をもはや的確に扱えなくなってしまうのです。コロナ禍の発信についてはより慎重になるべきでしょう。
行政はさまざまなリスク情報を発災前、発災時、発災後と発信します。行政は住民からの信頼をいかに維持するかが重要となります。これは住民に対して「へりくだる」のとは違います。また、行政が持っている情報をすべて出しても混乱を招くだけでしょう。情報を整理したうえで、「何のためにこの情報を出すのか」を明確にしてから情報を出すのです。個々の情報を出す「目的」については、情報と一緒に住民に伝えるべきです。これを平時から行うことで、信頼関係が生まれます。
先ほど「情報を整理して」と述べましたが、これは行政側が「受け手を意識して情報をカスタマイズする」という作業です。カスタマイズには情報の「形態」も含まれます。住民が使いやすいように情報を加工するのです。
とはいえ、住民全員が情報発信のターゲットとなるわけですので、受け手が「なんで自分に分かるように説明してくれないの」と感じるケースが出てくるのも仕方のないことです。
個々人に最適化(パーソナライズ)して行政情報を出すことは不可能といえます。この点は住民も理解しておく必要があるでしょう。いきなり本番では難しい。非常時を想定して、平時から出されている情報を基に最適化を考えることが求められます。