コロナ収束前の避難どうする? 九州豪雨から考える「3密」回避のヒント

熊本県八代市の避難所。ダンボールで区切られている=7月6日撮影 (Photo by Carl Court/Getty Images)


九州豪雨
水がたまり車の通行ができなくなったアンダーパス=2020年7月5日、熊本県人吉市(筆者撮影)

──私自身、2016年の熊本地震の時に、避難所に身を寄せていました。公立中学校の教室に雑魚寝をしていたのですが、当時を振り返ると避難所内に「3密」の場所は多かったと感じます。ウィズ・コロナの時代において、私たちはどこに避難すればよいのでしょうか。

一言で表すと「命を守れる場所」です。避難所や親類・知人宅、宿泊施設、車中泊などが想定されますが、災害による被害のリスクが少ない場所であることが大切です。平時からいざという時の避難先を決めておくことが求められます。

新型コロナウイルスが怖くて避難所に行かず、命が危険にさらされては元も子もありません。一番大切なのは「命」です。自分の命を守ることが大切なのだという視点を、平時から持っておくべきでしょう。「命を守る行動」を心がけてください。この視点に立てば、新型コロナの感染リスクがあったとしても、まずは命を守るために避難所に身を寄せるというのは合理的な行動といえます。

プライバシーを守れば「3密」を防げる


──避難所運営においては、どういった工夫が求められるのでしょうか。

すべての避難所には受付を設置する必要があります。熊本地震では受付がつくれず、いつの間にか人口密度が高くなっていた避難所が見受けられました。通路にまで人があふれていたケースもあったほどです。避難所の入り口には必ず受付を設置して、誰がいるのかを把握し、人数をコントロールする。

そして「3密」となりそうになったら、関係機関と連携して別の安全な避難所に移動してもらうことも時として必要となります。

受付の設置は、濃厚接触者の追跡にも有効です。検温と体調を確認し、受付で氏名等を告げて、決められたスペースに落ち着く。運営側は、避難所内のどこに誰がいるのかを常に把握しておく必要があります。


電柱の人の背丈ほどの位置に緑色のフェンスがぶら下がっていた。一帯が停電しており信号も動いていない。氾濫後の避難が困難であったことがうかがえる=2020年7月5日、熊本県人吉市(筆者撮影)

──特に避難所内で新型コロナの感染リスクを下げるために、運営側は何ができるのでしょうか。

消毒液の設置やマスクの着用は当然として、「3密」を避ける取り組みが求められます。分かりやすい基準としては、「プライバシーを守れば『3密』を防げる」と考えればよいでしょう。例えば、パーテーションを設置して、自分のスペースで安心して着替えたり横になったりできる環境がそうです。パーテーションがあれば最低限のプライバシーは守られ、かつ人と人との距離が確保できるため、接触機会も減ります。

避難所のプライバシー確保の意味で、パーテーションはこれまでも注目されていました。発災直後は段ボールをパーテーションにしたってかまいません。これから避難所において初期の段階からパーテーションの使用がスタンダードになってくれることを望みます。

もう一つ、「区分け」を明確にすることも大切です。ブルーシートを床に敷いたりして、地区ごとにスペースを分ける。そうすれば、ブルーシート以外の部分は通路となります。土足禁止エリアの設定も不可欠です。靴からスリッパに履き替える場所を明確にします。

熊本地震においては、余震が怖くて靴を履いたまま避難所に身を寄せる人が多く見られました。床の拭き上げが進まず、結局土足禁止にするまで数日かかった避難所が複数ありました。土足だと新型コロナに限らず、ノロウイルスなどの他の感染症のリスクが高まります。避難所開設の際には土足禁止を徹底すべきです。
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聞き手=田中森士・Forbes JAPAN OFFICIAL COLUMNIST

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