新型コロナウイルスの収束が見通せないなか、災害発生時における避難所運営や避難の方法はどうすべきだろうか。熊本地震で避難所運営を経験した⾃主防災組織や学校関係者へのヒアリング調査などを行ってきた、熊本大学・竹内裕希子准教授(地域防災・防災教育)に聞いた。
命を守れる場所に避難
──近年、私たちがこれまで経験したことのないような水害が増えています。水害をはじめとする災害時の避難について、何を心がければよいのでしょうか。
災害時は安全な場所に避難することが鉄則です。ここで言う「安全」とは、主観ではなく客観的な安全を指します。「今まで大丈夫だったから」「私の地域で災害が発生したことはないから」などは完全なる「主観」です。対してハザードマップは「客観的」に安全な場所を確認できます。平時からしっかりとハザードマップを確認し、家や職場周辺のリスクを確認しておく必要があるでしょう。
熊本大学の竹内裕希子准教授(本人提供)
──今回の九州での豪雨災害では、土砂崩れに巻き込まれたケースもありました。
豪雨は氾濫だけでなく土砂災害も引き起こします。台風の場合は、沿岸部の高潮にも警戒が必要です。梅雨前線と台風では、災害の種類も異なります。自宅周辺で何が起きるのかを、複数の視点で想定しておく必要があるといえます。
河川は一カ所で堤防が決壊したり氾濫したりすると、低地が一気に水につかります。一方、土砂崩れは、一カ所崩れたからといって別の場所が崩れるとは限りません。つまり、過去の経験があまり参考にならないのです。過去の経験を参考にせず、冷静に自宅のリスクを捉えてください。
──避難所に向かう途中に災害に巻き込まれるケースも見られます。どうすれば防げるのでしょうか。
やはりハザードマップをしっかりと確認しておくことが求められます。自宅が浸水する可能性があるのかを確認し、浸水のリスクが高ければ、浸水が発生する前に安全な道を通って避難する。もし浸水しないのであれば、自宅の2階以上に避難する「垂直避難」も選択肢に入ります。また、すでに河川が氾濫するなどして移動するのが危険な状態の場合も、垂直避難はするべきです。