自分が死んだ後の子どもが心配 死後の財産管理はどうするか

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生命保険信託の具体的コストは?


現在、生命保険信託を扱っている生命保険会社は4社あり、コストのかかり方も前述のようにまちまちだ。以下では、ソニー生命の例で、具体的なお金の流れを見てみよう。

まず、2000万円の生命保険をライフプランナーに申込み、契約する。そして、生命保険信託を希望する場合は、ソニー生命が提携している三井住友信託銀行(以下、信託銀行)にライフプランナーとともに出向き、仕組みの説明を受ける。

生命保険信託を申込む際には、事務手数料5万5000円(=5万円+消費税)を信託銀行に支払う。この時、5000円以上の金銭信託の申込みが別途必要となる。これが、前述の費用Aに当たる。あとは、ライフプランナーからの案内を受けて、保険金受取人を信託銀行に変更すれば、親が生前にするべき手続きは完了する。

親が死んだ後の流れとしては、まず死亡の連絡をライフプランナーが受けると、保険会社と信託銀行からの案内が第一受取人に届く。第一受取人が必要書類を提出すると、それをもとに信託銀行が保険会社に保険金を請求し、ソニー生命は信託銀行に保険金を支払う。

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ソニー生命

信託銀行が受け取った保険金と、生命保険信託の申し込み時に契約者が預け入れた金銭信託の合計が信託財産となる。上記のケースの例では、信託財産は2000万5000円(保険金2000万円+金銭信託5000円)となる。

費用Bとして44万円(2000万円×2%+消費税)が控除されると、残りの合計額は1956万5000円に。そして、ここから毎月4万円ずつ、約40年間(≒1956.5万円÷4万円=489カ月)にわたって交付されるというイメージだ。

第一受取人が、途中で亡くなった場合は、第二受取人に残額が交付されて終了。第一受取人が受取開始から40年超にわたり健在だった場合は、生存中に生命保険信託からの受取りは終了となる。

ソニー生命の生命保険信託では、費用Cのコストはかからない。

ちなみに、生命保険信託は、障害者を抱える家庭だけでなく、そのほかのさまざまなシーンでも活用できる。最近も、「親が認知症で施設に入所しているが、自分の体調も最近思わしくなく、自分にもしものことがあったら親の施設利用のお金が滞りかねない」という熟年男性や、「私が亡くなったら、子どもに生命保険でお金を残しても、浪費家の別れた夫が保険金を横取りするかもと思うと腹立たしい」といったシングルマザーからのFP相談で、選択肢の候補に生命保険信託を案内した。

先日、生命保険信託の話を聞いた人が「生命保険信託のコストって高いですよね。保険会社は儲け過ぎでは」と言ってきた。「いえいえ。よく見てください。問題にしているコストは、信託銀行などが手にするお金なので、保険会社は通常価格の生命保険料しか受け取っていないですよ。それなのに信託銀行まで一緒に付いてきてサポートしてくれるのは、頭が下がるくらいです」と答えたら、驚いていた。

信託銀行などが手にするコストや最低金額も、生命保険信託が初めて登場した当初に比べれば、かなり引き下げられてきている印象がある。保険会社や信託銀行などは、保険契約者のコスト負担を増やさない努力をしていることを、もっと声を大にして言いたい。

連載:ニュースから見る“保険”の風
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文=竹下さくら

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