自分が死んだ後の子どもが心配 死後の財産管理はどうするか

Maskot/Getty Images

「親亡き後」を心配する声が、最近、切実なものとして聞こえてくる。

特に障害者を抱える家庭では、今回のコロナ禍で「できるだけ自宅待機」を要請され、24時間看守るなかで、「親である自分が死んだら、この子はどうなるのか」と、ぐるぐる答えのない問いが頭をめぐり、眠れない日々が続いているのではないだろうか。

明日のこと、将来のことを考えると、不安は大きく、何をどうしていいかわからない……そんなFP相談を受けた際は、まずはいまできるお金の準備から始めてほしいと伝えている。少しずつでもお金の手当てを進めていけば、先への視界が、きっと少しずつ開けてくるはずだ。

死後の心配を取り除く生命保険信託


「親亡き後」を心配する人たちは、ここ数年、ジワリジワリと増えてはいた。子どもが高齢化し、親もさらに高齢となって、「待ったなし」の状況が訪れているからだ。

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厚生労働省「成年後見制度の現状(令和2年6月)」より筆者作成

自分たちが死んだ後の子どもの将来を心配する親が検討するプランとしては、生命保険に入るのがひとつの方法だ。しかし、問題は、受け取った保険金を子どもが自分で管理できるかどうか。

特に重い障害を持っていたり、まだ小さかったり、金銭管理が難しい認知症などの場合はなかなか難しく、数十年分の生活資金と思って残した保険金をあっという間に費消してしまうこともありがちだ。残念なことに、身内や親戚に使い込まれる事件まで散見されている。

せっかく「生命保険」でお金を残しても、どうしても拭きれない親としての不安を解消したいなら、「生命保険信託」の利用が適しているかもしれない。

普通の生命保険では定められない「保険金の使い方」や「行き着く先」までを、生命保険信託にすれば、親が生前に決められるからだ。具体的に保険金の使用目的などを指定すれば、契約に基づいて信託銀行などが目的通りに使われたかをチェックする商品もある。

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筆者作成

生命保険信託の手続きの流れは、意外に簡単だ。まずは、保険会社と「(1)生命保険を締結」する。ここまでは、普通の生命保険を申し込むのと同じ。保険料も、通常の生命保険と同額だ。

そして、その保険会社と提携する信託銀行等に出向いて「(2)信託契約を締結」し、親(=契約者)が亡くなった以降に保険金をどのようにしたいかの取り決めをする。

あとは、「(3)保険金受取人を信託銀行に変更」する手続きを保険会社に行えば、親自身がする手続きは終わりだ。

その後の流れは、契約者が亡くなると、信託銀行が保険会社に「(4)保険金請求」をして、保険会社から「(5)保険金の支払い」を受ける。そして、親が生前に希望した通り「(6)信託財産の定期的な交付」が行われることになる。

生命保険信託ならではのポイントは、受取人について、最初に受け取る「第一受取人」のほかに「第二受取人」を指定できる点だ。たとえば、知的障害のある子どもが経済的に困らないように第一受取人にし、第一受取人が亡くなった段階でその兄弟姉妹に残額を渡すといったこともできるのだ。

ただし、「生命保険信託」の利用にあたっては、コストがかかる点は理解しておきたい。まず信託契約の締結時の費用(A)が、約5000円〜5万円程度。そのほか、以下のように費用BやCといった手数料を徴収するところが多い(保険会社によって異なる)。

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筆者作成
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文=竹下さくら

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