ビジネス

2020.08.03

アカツキCEOが、ある日本酒ブランドへ投資を決めた理由

「アカツキ」CEO 香田哲朗


香田:さらに言えば、SNSのコメントひとつで人を死に追いやってしまうこともあるこの時代に、精神を成長させるのは美意識なのかなとも考えています。

いま必要なのは道徳や倫理じゃなくて美意識なんじゃないかな、と。「いじめは悪いこと」といっても無くならないけど、「いじめはかっこわるいこと」となったらやめるんじゃないかな。

生駒:僕はその精神的な豊かさということからラグジュアリーってなんだろうと最近よく考えているんです。

いままでの人を動かすものはファッションや持ち物など、外に顕示する要素が多かったけれど、これからは外の世界や他人に誇示するだけではなく、自分の内面の豊かさを追求していくものなのかなと

香田:全身高級品で着飾っていても、心が空虚な人っていますもんね。

生駒:まさに「心を満たして、人生を彩る」のが「SAKE100」のテーマなんです。僕らは機能的な価値ではなく、情緒的な価値を創出していきたい。



香田:今って、テクノロジーの発達から、かなり効率の良い社会になっていますよね。たとえば今まで映画を観ようと思ったら、映画館やレンタル店に借りに行っていたのが、配信サービスで簡単に観られるし、食事をしようと思ったらコンビニやデリバリーでもかなりおいしいごはんを食べられる。

つまり、お金をかけずに得られる経験の水準が上がっているんです。そんな社会にあって、お金をかけることの意味とはなにかと考えていくと、よほど明確でなければ選ばれない。

あえて外食すること、あえてモノを買うこと、あえて高価なお酒を飲むこと、あえて人とリアルに会うこと……この「あえて」の再定義が必要とされているように思います。たとえばテレビができた後のラジオのようにね。

生駒:デジタルでは置換できない体験、空気感、温度が必要とされていますね。

香田:リモートワークが進むから通勤時間がセーブできるし、時間とお金が余っちゃう。週に3回飲みに行くなら、自宅で「百光」を飲んだほうがいいよね(笑)。


生駒龍史◎1986年東京生まれ。2014年より日本酒メディア「SAKETIMES」をリリース。現在は国内最大規模となる。18年6月に老舗酒屋有限会社川勇商店のM&Aを実施し、酒販免許を獲得。7月より日本酒ブランド「SAKE100(サケハンドレッド)」をリリース。これまで累計3.5億円の資金調達を実施し、日本酒事業のグローバル展開を目指す。2020年8月3日より「SAKE HUNDRED」としてリブランディングを実施。

香田哲朗◎1985年長崎県佐世保市生まれ。2010年塩田元規氏とアカツキを共同創業。2016年同社を東京証券取引所マザーズ市場に上場し、2017年には東京証券取引所一部に市場変更。20年6月には代表取締役社長に就任。アーティストの支援や、アートを介したコミュニティー形成を目指す「一般財団法人東京アートアクセラレーション」代表も務める。

構成=秋山都 写真=吉澤健太

ForbesBrandVoice

人気記事