生駒:僕らが目指しているのもまさにそこです。日本酒は世界でまだまだニッチな存在だからこそ、その王道を極め、新たな市場を開拓していきたい。
そもそも日本酒は「いいものをより安く」と薄利多売のビジネスモデルとなっているのが業界の課題でもあり、僕は、この品質に対して安すぎる価格が本来の価値を棄損していると考えています。
安くて美味しい酒があることも素晴らしいことですが、僕たちが作る酒は少量だけど圧倒的に高品質、高価格。おかげさまで多くの方に支持いただいて、今年の新商品「百光2020 Fomula」は、約5000人の方からご予約いただき、わずか3日で完売しました。
いま、新型コロナウイルスで酒蔵も大きな打撃を受けていますが、僕たちの日本酒にかける思いやモノづくりへの理念に共感してくださる方が多いことに励まされています。
香田:僕もなかなか買えないですもんね。会食のとき、よくギフトとしてお渡ししているのだけど、次にお会いすると「アレ、どこで買えるの?」と反響もいただいていますよ。
アフターコロナで僕たちの価値観はどう変わる?
生駒:僕らの酒は「ほどほどにおいしい」のではなくて「究極的にうまい」ですから。この人気高騰の裏側にはもちろんステイホームの巣ごもり需要もあるとは思います。
外食から、いい酒や食材を買って家で楽しむ高級内食へとシフトしつつありますよね。
香田:新型コロナウイルスにめげずに伸びたのはプレミアム商材とソーシャルグッドな商品。いまお金を使ったら誰かのために役立つという利他的な商材は、社会のために貢献しているという感情報酬を得られますからね。
生駒:価値観がひとつ増えたように思います。「食べたい」「飲みたい」に加えて生産者や提供者を「応援したい」という気持ち。
香田:新型コロナウイルスはある意味でグローバリゼーションを断ち切ったでしょう。たとえば世界で分業していた産業はすべて中断しました。
そうなってみると自分たちの近くでいま危機に陥っている農業や漁業などの生産者、そして飲食店の人など守りたいという気持ちが少し芽生えてきたかな。もし次になにか大きな災害や危機が訪れたとき、僕たちはもっと早く支援の手を指し伸ばせるでしょうね。
精神を豊かにする「食」と「アート」
生駒:香田さんは「アカツキ」での事業とは別に「東京アートアクセラレーション」の代表も務めています。なぜアートに注目したんですか?
香田:僕は世界をつなぐのは食とアートだと思っているんですよ。言葉や文化が異なっても、食とアートの世界では感覚をシェアすることができるから。
でも、僕は料理ができないし、絵を描くのが得意なわけではない……ということでパトロネージュなんです。
自分ができないことをやってくれている人をサポートすることで、その人の世界を疑似体験する。というか、半歩下がってついていく感じ。だからエンジェル投資するときには、その疑似体験や学び・気づきがあるジャンルを選ぶようにしています。