テレビやラジオ、出版の分野ではここ20年ほどで統合化が進み、有力コンテンツを生み出すクリエイターたちはウェブやモバイルの大手に取り込まれてきた。そして今、その流れはポッドキャストに波及した。
音楽ストリーミングサービス大手のパンドラを運営する衛星ラジオの「シリウスXM」は7月13日、ポッドキャスト番組制作や広告事業を手がける「Stitcher」を、総額3億2500万ドル(約348億円)で買収するとアナウンスした。シリウスXMはStitcherを保有するE.W. Scripps Companyに対し、まず2億6500万ドルを現金で支払い、2021年までの業績をベースに約6000万ドルを追加で支払うと述べた。
シリウスXMは経営に苦しむパンドラの買収交渉を2017年から開始し、35億ドルを支払って昨年、傘下に収めていた。
ポッドキャストのプラットフォームとして知られるStitcherは現在、約35万の番組を抱えており、2019年だけで680万エピソードを配信している。Stitcherのオーディエンスは米国だけで1億人以上とされている。
2008年時点では月に最低1回、ポッドキャストを聴く人口は全体のわずか9%だったが、現在は37%に拡大している。
今回の買収がシリウスXMの業績の追い風となるのは確実だ。同社は膨大な数のトーク番組を運営しており、それらの番組をStitcher経由で販売したり、広告で収益化することが可能になる。
シリウスXMは今回の買収により、Stitcherのポッドキャスト事業及び、広告ネットワークのMidrollを手に入れることになる。現在の運営元のScrippsは、2016年に450万ドルでStitcherを買収していた。また、2015年にMidrollを5500万ドルで買収していた。
ポッドキャスト分野の他の有力プラットフォームとしては、BreakerやOvercast、RadioPublicなどが知られている。また、公共ラジオのNPR傘下には、Pocket Castsがある。
グーグルやアップルらもこの分野の大手と呼べるが、スポティファイやシリウスXMらは、ポッドキャスト業界の新たな覇権を握ろうとしている。