この考え方、どこかで聞き覚えがないだろうか? これはウーバーの中核事業と全く同じだ。ウーバーやリフトなど配車サービス企業の多くは長い間、人をある場所から別の場所へと運ぶことで金を失いながら、乗客輸送の主要なコスト要因である運転手の存在がなくなるのを待っている。
ベンチャーキャピタリストなど、合理的考えを持つはずの投資家が、ウーバーのような企業に投資してきた理由として唯一考えられるのは、自動運転車技術だ。自動運転車が現れれば、配車サービス運営費の70%以上が一瞬にして消える。そこからはバラ色の日々で、赤字期に苦労してつかんだ市場シェアを享受できる。
同じことが料理宅配サービスにも起きる。宅配を担う原付や自転車、自動車の運転手が消えれば、収益性は自動的に改善する。宅配ロボットを導入しているポストメイツは、この点でリーダー的存在だ。
しかし、人間の運転手への支払いがなくならない段階で唯一できることは、宅配を頼む人の数を増やし、自社の知名度を上げることだ。市場シェアをめぐる争いは、非常に長く激しいものになるだろう。この分野で今後さらに企業買収が起きることは間違いない。
ここで生じる疑問は、人は今後、自分で料理をしなくなり、食事を注文して家で食べるようになるのだろうか、というものだ。1週間のうち、料理宅配サービスを利用するのは何回だろう? 私がこれを問う理由は、こうした企業の事業のポテンシャルを測る以外にもいくつかある。
1つ目は健康だ。宅配された食事は、自宅で作った食事よりもはるかに不健康であることが多い。2つ目に経済面だ。準備にかかる時間を考慮したとしても、料理は大抵の場合、家で作った方が安上がりだ。3つ目は地球環境だ。テークアウトをすると、膨大な量の廃棄物が生まれる。
これらは全て変革が可能だ。価格こそ高くなるものの、厳選された食材を使い、健康的で栄養豊富なテークアウトの食事を作ることは可能だ。同様に、廃棄物やプラスチックの過剰使用を抑えることもできる。しかし現状では、食事の配送サービスの定期利用は健康面や経済面、そして環境面で問題を生む。
それでも、ウーバーによるポストメイツ買収は、同社が料理宅配事業の大きな成長可能性を見越し、多くの人が自炊をやめて宅配を利用するようになると考えていることが示されている。
同社の見通しが正しいかは分からない。ただ現時点で分かるのは、私よりもウーバーの方が将来の食事トレンドについてはるかに明確な考えを持っているようであることだ。