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日本が誇る品質にエモーショナルな価値を積み上げていけば海外でも十分勝機はある。

その日、田島寿一は満面の笑みを浮かべ、社長室に迎え入れてくれた。壁際に目をやると玩具のラジコンヘリが並び、デスク上にはミニチュアカーが飾られている。
聞けば、ヘリは気分転換を兼ねて社長室で飛ばすという。そんな無邪気な一面を覗かせる田島氏が、世界的ラグジュアリーブランドでの経験と実績を買われ、当時、経営が悪化していた旧・田崎真珠に招聘されたのは2009年1月のこと。再建を任されてからすでに6年が過ぎた。「すぐに着手したのがイメージの刷新でした。幸いにもこの会社はブランド認知の再生率が非常に高く、確かな知識と技術をもつ職人を多く抱えていた。ただデザイン面で独創性を発揮する力に欠けていたのです」

 田島氏はブランド名を田崎真珠からTASAKIに変え、その後、社名も同様に変更した。そしてクリエイティブ・ディレクターにNYで活躍するファッションデザイナーのタクーン・パニクガルを抜擢する。「それまでダイヤモンドの分野でも実績があったのに、消費者にうまく訴求できていませんでした。そこでCIを変更し、さらに真珠=フォーマルな装飾品という業界の常識を打ち破る意味でも、タクーンを起用してコレクションラインを始めたのです」
 ジュエリーの既成概念にとらわれない、彼の革新的な作品は、新たなファンの心をとらえ、徐々に市場に浸透していく。グッチやクリスチャン・ディオールなどでブランド再構築を経験し、その成功に携わってきた田島氏にはひとつの確信があった。「正しい商品を、正しい方法で提案して付加価値を上げていけば、必ず売り上げはついてきます。でも数字に現れるには4〜5年かかる。大切なのは、進んでいる道が誤っていないか常に検証を繰り返すこと。TASAKIでも、5年かかりました」

 田島氏が目指すのは、TASAKIを日本発のラグジュアリーブランドに育て上げることだ。創業60周年を迎えた昨年はパリにフランス法人を設立。すでに現地法人のあるアジア諸国だけでなく、この先の5年は海外戦略に力を入れていくという。「海外で日本製というと工業製品としての品質を期待されることが多い。でもラグジュアリー市場ではエモーショナルな価値をどう訴えるかが大事なのです。そのひとつの方法がデザインであり、それが難しければ難しいほど、我々の技術力や審美眼をアピールできると考えています。チャンスは十分あると思いますよ」
 

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